雪解け水が1400世帯分の電力に、豪雪地帯のダムで小水力発電自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2015年11月05日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

南部のダムでも小水力発電所を建設中

 長野県は小水力発電の導入量が全国でもトップクラスにある。県営の水力発電所は北部と南部の両地域に合計14カ所が運転中だ(図5)。南部では太平洋まで流れる天竜川の流域に水力発電所が広がっていて、この流域でも新しい小水力発電所の建設プロジェクトが進んでいる。

図5 長野県の北部(上)と南部(下)に展開する県営水力発電所。出典:長野県企業局

 1958年に長野県営で初めて運転を開始した「美和(みわ)発電所」が南部の伊那市にある。発電後に放流する大量の水は「高遠(たかとう)ダム」に貯めてから、かんがい用のほかに別の水力発電所まで導水路で供給している(図6)。それ以外にもダムの下流の三峰川(みぶがわ)の自然環境を健全な状態で維持するために、一定の水量を流し続ける必要がある。

図6 長野県営で初めての「美和発電所」と周辺地域。出典:長野県企業局

 この「維持放流」を利用して「高遠発電所」をダムの直下に建設する計画だ(図7)。水量は最大で毎秒1立方メートル、落差は24メートルで、180kWの電力を供給することができる。年間の発電量は125万kWhを見込んでいて、350世帯分の使用量に匹敵する。建設工事は奥裾花第2発電所と並行して進めていくが、運転開始は半年早く2016年10月を予定している。

図7 「高遠発電所」の設置イメージ。出典:長野県企業局

 2カ所で建設中の小水力発電所はダムからの放流を利用する点では同じだが、発電所に水を取り込む方式が違う。高遠発電所ではダムの放流設備から水を取り込むのに対して、奥裾花第2発電所では既設の取水管を分岐させて新設の水車発電機に流し込む(図8)。それぞれの放流の特性を生かした導入方法である。

図8 「高遠発電所」(左)と「奥裾花第2発電所」(右)の取水方法の違い。出典:長野県企業局

 長野県営の水力発電所は運転中の14カ所の合計で発電能力が9万9050kWに達している。新設の2カ所を加えると10万kWを超える。さらにダムのほかに農業用水路の水流も生かして導入量を拡大していくプロジェクトが始まっている。今後も小水力発電で全国のトップを走り続ける勢いだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.