国内初の地熱発電所を52年ぶりに更新へ、2種類の蒸気で出力2000kWアップ:自然エネルギー(2/2 ページ)
新たに導入する設備には「ダブルフラッシュ方式」を採用して発電能力を引き上げる。地熱発電では地下深くまで生産井(せいさんせい)を掘削して高圧の蒸気をくみ上げるが、蒸気と同時に高温の熱水も噴出する。既設の発電設備は地下からくみ上げた高圧の蒸気だけでタービンを回転させる「シングルフラッシュ方式」を採用している。
シングルフラッシュ方式では熱水は発電に利用できないが、ダブルフラッシュ方式では熱水を減圧して低圧の蒸気を発生させることが可能だ。この低圧の蒸気もタービンに送り込んで発電に利用することにより、高圧の蒸気だけを利用する場合よりも発電能力が高くなる(図3)。九州電力は八丁原発電所にダブルフラッシュ方式の発電設備を導入した実績がある。
図3 大岳発電所に導入するダブルフラッシュ方式の地熱発電設備。高圧の一次蒸気と低圧の二次蒸気を組み合わせて発電能力を高める(画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力
大岳発電所の設備更新にあたっては、地下から蒸気と熱水をくみ上げる生産井は従来のまま使い続ける。同様に発電後の熱水を地下に戻すための還元井(かんげんせい)も変更しない。地熱資源の使用量を変えずに、発電効率を高めて発電量を増やすため、環境に対する影響は従来と変わらない想定だ。
発電所が立地する九重町は大分県と熊本県にまたがる「阿蘇くじゅう国立公園」に入る(図4)。大岳発電所は国立公園の第3種特別地域に含まれていて、発電所の新設や設備更新は可能だが、景観や動植物に対する影響の低減を厳しく求められる。九州電力は10月29日に経済産業大臣と関係自治体の首長に提出した準備書の中で、低騒音・低振動型の機器を採用するなど、環境に対する影響を軽減する対策を掲げている。
図4 大岳発電所が立地する大分県の九重町。出典:九州電力
- 低温の地熱でも発電できる、大分県の火山地帯から8300世帯分の電力
日本で地熱発電が最も活発な大分県の九重町に、九州電力グループが新しい地熱発電所を運転開始した。100度前後の低温の地熱でも発電できるバイナリー方式を採用して、一般家庭で8300世帯分の電力を供給することができる。地元の九重町が蒸気と熱を提供して使用料を得るスキームだ。
- 阿蘇山の西で地熱発電プロジェクト、九州電力などが開始
日本で有数の地熱資源が存在する熊本県の南阿蘇村で地熱発電に向けた資源開発プロジェクトが動き出した。九州電力を含む2つの事業者グループが村長の同意を受けて6月から地表調査を開始する。2015年度末までに調査結果をまとめて、2016年度には掘削調査に着手する見通しだ。
- 地熱発電所で利用できない熱水から、8600世帯分の電力を作る
出光グループは大分県にある九州電力の地熱発電所に、地下からくみ上げた高温の蒸気を供給している。同時に湧き出る低温の熱水は発電に使えなかったが、新たにバイナリー方式の設備を導入して地熱発電を開始する。発電能力は5MWで、一般家庭の8600世帯分に相当する電力を供給できる。
- 地熱発電で2つの規制緩和、国立・国定公園内で開発促進
地下に大量の地熱資源が存在する国立・国定公園を対象にした規制が緩和された。環境省は公園内の建築物に対する高さ規制を撤廃したほか、規制対象地域の周辺から地下にある地熱資源まで傾斜掘削を認める。規制緩和によって大規模な地熱発電の導入量が2倍に拡大する見通しだ。
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