徳島県は再生可能エネルギーで地方創生に取り組む新戦略を打ち出した。「環境首都」を掲げて東京都に対抗する意気込みのもと、太陽光を中心に風力・小水力・バイオマスの導入量を拡大させる計画だ。電力の自給率を2030年度までに37%へ引き上げ、水素エネルギーの普及にも力を入れる。
「自然エネルギー立県とくしま推進戦略」がスタートしたのは、東日本大震災から1年後の2012年3月のことだ。地域の資源を活用して再生可能エネルギーの地産地消を進めることにより、災害に強い街づくりに加えて、新たな産業で地方創生を図る狙いがある。それから3年以上が経ち、「次期・自然エネルギー立県とくしま推進戦略」の策定作業が最終段階に入っている。
次期の戦略では「環境首都」を目指す方針を前面に押し出して、「VS東京」を旗印に掲げる。これまで設定していなかった導入量の目標値も設定する。県内の電力消費量に占める再生可能エネルギーの比率(自給率)を2020年度に25%、2030年度には37%まで引き上げて、東京都の目標値を大幅に上回る計画だ(図1)。
再生可能エネルギーの中でも徳島県は太陽光発電に適している。都道府県庁がある都市の年間日射量を比較すると、徳島市は全国で7番目に多く、東京23区と比べて8%以上、全国平均より10%以上も多い(図2)。それだけ太陽光発電の効率が高くなり、年間の発電量を増やすことができる。
実際に再生可能エネルギーの導入状況を見ると、太陽光発電による電力の供給量が2013年度から2014年度にかけて大きく伸びている。2013年度には徳島県内で消費する電力のうち太陽光の占める割合は1.4%だったが、2014年度には一気に5.1%まで増えた(図3)。これに伴って再生可能エネルギーによる電力の自給率は22%に上昇した。国が掲げる2030年のエネルギーミックス(電源構成)の目標値に早くも達している。
2014年度に運転を開始した太陽光発電設備の中では、東部の小松島市で2015年2月に稼働したメガソーラーが発電能力21MW(メガワット)で最大だ。沿岸部に広がる日本製紙の工場の跡地25万平方メートルに建設したもので、年間の発電量は2500万kWh(キロワット時)を想定している(図4)。
一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算すると約7000世帯分に相当する。小松島市の総世帯数(1万7000世帯)の4割をカバーすることができる。発電した電力は固定価格買取制度で四国電力に売電して、年間に10億円の売電収入を得られる見込みだ。発電設備の効率を表す設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は13.6%になり、国内標準の13%を上回る。
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