地域密着型のバイオマス発電が拡大、太陽光の買取価格は下がり続ける2016年の電力メガトレンド(2)(3/4 ページ)

» 2016年01月06日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

「固定価格」から「変動価格」へ

 着実に拡大するバイオマス発電とは対照的に、太陽光発電は政府の方針転換で先行きが不透明な状況だ。太陽光発電の買取価格が年度ごとに引き下げられてきた影響で、2014年度に入ると制度の認定を受ける発電設備が伸び悩み始めた(図7)。それでも実際に運転を開始する太陽光発電設備は拡大して、太陽光で供給できる電力量は国全体で増え続けている。

図7 固定価格買取制度による太陽光発電設備の導入量と認定量(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 政府が目標に掲げる2030年度の電源構成(エネルギーミックス)を実現するためには、太陽光だけで7%の電力を供給する必要がある。5種類の再生可能エネルギーの中では旧来型の水力(2014年度で9.0%)を除いて最も多くの電力を供給することになる(図8)。そのためには合計で6000万kW程度の太陽光発電設備が必要だが、すでに固定価格買取制度の認定を受けた発電設備だけで8000万kWを超えている。

図8 2030年度の電源構成の内訳。出典:資源エネルギー庁

 このまま太陽光発電が増え続けても需給バランスの調整ができれば問題はないが、まだ日本では再生可能エネルギーを加えた需給調整技術の開発と導入が進んでいない。原子力発電を復活させたい政府の思惑もあり、今後ますます太陽光発電を抑制する対策が強化されていく。出力制御に続く第2の施策は買取価格の抜本的な見直しだ。

 固定価格買取制度の初年度には非住宅用の太陽光発電の買取価格は40円と高かった。発電設備の建設費や運転維持費の水準をもとに決めたもので、その後は2015年度まで4年連続で引き下げられてきた(図9)。制度を開始して4年目の2015年7月からは27円になり、家庭向けの電気料金の単価と変わらないレベルになっている。太陽光発電の買取価格が高かったというのは過去の話になりつつある。

図9 太陽光発電(非住宅用)の買取価格の前提条件。出典:資源エネルギー庁

 それでも政府は対策が不十分と判断して、買取価格の決定方式そのものを変更する。従来の買取価格は制度の名称が示すように「固定価格」が基本だ。いったん決まった買取価格は買取期間を通じて変わらない。非住宅用の太陽光発電ならば20年間にわたって固定価格で売電することができる。

 これに対して検討中の新方式では「変動価格」へ移行する。太陽光からバイオマスまで特性に合わせて4種類の方式を使い分ける案が有力で、非住宅用の太陽光発電には「入札方式」を導入する方向だ(図10)。電力を買い取る事業者が入札を実施して、発電事業者が応札して買取価格が決まる。状況によっては売電できないリスクが伴う。

図10 政府が検討中の新しい買取価格の決定方式。出典:資源エネルギー庁

 風力発電や住宅用の太陽光発電には、将来の価格低減率を事前に設定する方式を採用する見通しだ。買取期間中に段階的に買取価格を引き下げることで、発電事業者のコスト削減に向けた努力を促す狙いがある。

 そのほかの中小水力・地熱・バイオマスの3種類に対しては、現行の価格決定方式を厳格にした「トップランナー方式」を適用する予定だ。従来の買取価格は発電設備の建設費や運転維持費の平均値をもとに決めていたが、トップランナー方式ではコスト効率の高い優良な発電設備を参考にして買取価格を決定する。

 政府が買取価格の引き下げを急ぐ背景には、将来にわたって再生可能エネルギーの買取費用が増大する問題がある。2030年度に再生可能エネルギーだけで国全体の電力量の22〜24%を供給する目標を達成したうえで、年間の買取費用を4兆円以下に抑える方針を掲げた(図11)。一方で火力発電と原子力発電の燃料費を4兆円近く削減して、再生可能エネルギーを増やしても発電コストが増加しないようにする。

図11 2030年度の再生可能エネルギーによる発電電力量と固定価格買取制度(FIT)による買取費用の見通し。出典:資源エネルギー庁

 この目標を実現するためには、太陽光の買取価格を2030年度の時点で平均して30円強に抑えなくてはならない。すでに40円の買取価格で2030年以降も保証されている太陽光発電設備が数多く稼働していることを考えると、2020年代の初めには買取価格を20円以下へ引き下げる必要がある。新しい買取価格の決定方式は2017年度にも導入が見込まれる。

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