2016年は再生可能エネルギーの流れが大きく変わり始める。これまで急速に伸びてきた太陽光発電は買取価格の低下や出力制御の対象拡大によって開発計画が減少する見通しだ。地域の資源を活用したバイオマス発電が有利な条件をもとに拡大する一方で、風力・中小水力・地熱発電には課題が残る。
東日本大震災が発生した直後の2011年度には、日本の再生可能エネルギーの比率は旧来型の水力発電を除くと1.4%に過ぎなかった。それが3年後の2014年度に3.2%まで増えて、水力発電を加えると石油を抜く規模に拡大した(図1)。CO2(二酸化炭素)を排出しない電力源として重要性は高まるばかりだが、急成長に伴ってさまざまな課題が顕著になったことも事実である。
再生可能エネルギーによる発電設備の導入量は早くも4000万kW(キロワット)を超えて、国内にある原子力発電設備と同程度の規模になった。しかも固定価格買取制度が始まった2012年7月以降に運転を開始した新しい発電設備が半分以上を占めている(図2)。とはいえ新設分の大半は太陽光発電で、そのほかの風力・地熱・中小水力・バイオマスは合計しても100万kWに満たない。こうした傾向は今後しばらく続いていく。
しかし太陽光と風力は天候によって出力が大きく変動する問題がある。太陽光は夜間に発電することができないため、主力の電力源にはならない。天候の影響を受けずに発電できる地熱・中小水力・バイオマスが増えていかないと、毎日の電力の供給に支障をきたしかねない状況になってしまう。
そこで政府は2015年度から抜本的な対策に乗り出し、2016年度には実行計画を加速させる方針だ。これまで予想以上の成果を上げた固定価格買取制度の運用方法を見直して、太陽光発電の導入量を抑える一方、そのほかの再生可能エネルギーを促進するための施策を展開する。
第1の対策は2015年1月に導入した「出力制御ルール」の対象拡大だ。出力制御は特定の地域内で電力の供給量が需要を上回る状況になった場合に、電力会社が一部の発電設備の出力を抑制できる運用ルールである。最初に出力を制御しやすい火力発電を一定レベルまで低下させた後で、火力と同様の特性があるバイオマス、さらに出力が不安定な太陽光と風力を抑える(図3)。
現在のところ東京・中部・関西を除く全国7つの地域では、太陽光と風力による発電設備は出力制御の対象になる。地域によっては無制限で出力を抑制しなければならず、発電事業者の収益に大きな影響を与えかねない。特に発電設備が数多く稼働している太陽光は出力制御の対象に入りやすい。
その一方で出力が安定している地熱と水力に加えて、地域の資源を利用したバイオマス発電は出力制御の対象から除外する。「地域資源バイオマス発電」には森林で発生する間伐材のほか、生ごみや下水などの廃棄物を燃料に利用して、エネルギーを地産地消するケースが該当する。2016年度は有利な条件に恵まれた地域資源バイオマス発電が全国各地に広がっていく。
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