日本政府が目指す水素社会実現への道スマートエネルギーWeek 2016(1/2 ページ)

2016年3月2日に開催された「FC EXPO 2016」の基調講演では「水素社会の幕開け」をテーマとし、経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部燃料電池推進室室長の戸邉千広氏が登壇。日本における水素社会実現に向けた取り組みを紹介した。

» 2016年03月11日 13時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 エネルギーの総合展示会である「スマートエネルギーWeek 2016」(2016年3月2〜4日、東京ビッグサイト)内の「FC EXPO 2016」では、FCVをはじめ水素・燃料電池に関連した製品・技術、装置、システムが出展。その基調講演では、経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部燃料電池推進室 室長の戸邉千広氏が登壇。「水素社会の幕開け」と題し、日本政府が取り組む水素社会実現に向けた総合的な取り組みを紹介した。

日本に向いた「水素」の活用

 水素エネルギー利活用の意義には「省エネルギー(燃料電池の活用によって高いエネルギー効率が可能)」「エネルギーセキュリティ(水素は副生水素、原油随伴ガス、褐炭などの未利用エネルギーや、再生可能エネルギーを含む多様な一次エネルギー源からさまざまな方法で製造が可能であり、地政学的リスクの低い地域からの調達や再エネ活用によるエネルギー活用によるエネルギー自給率向上につながる可能性)」「環境負荷低減(利用段階でCO2を排出しない。さらに水素の製造時に二酸化炭素回収・貯留技術を組み合わせ、または再エネを活用することでトータルのCO2フリー化が可能)」「産業振興(日本の燃料電池分野の特許出願数は世界一であるなど、日本が強い競争力を持つ分野)」などの点が挙げられる。

 水素の製造方法については、現在は化石燃料(石油・天然ガスなど)副生水素(製鉄・化学など)から工業プロセスで既に実用化されている。中期的にみると褐炭などの低品位炭など未利用エネルギーが活用され、さらに長期的には風力、太陽光などの再生可能エネルギーによる電気を使うことで水の電気分解により製造することが考えられている。

photo 図1 水素の製造方法(クリックで拡大)出典:経済産業省 資源エネルギー庁

 日本ではこうして製造した水素を「フェーズ1(水素利用の飛躍的拡大)」「フェーズ2(水素発電の本格導入/大規模な水素供給システムの確立)」「フェーズ3(トータルでのCO2フリー水素供給システムの確立)」と3段階に分けた水素・燃料電池戦略ロードマップを策定し活用を進める計画だ。戸邉氏は「フェーズ2の段階では水素を発電に用いることを目指すため、大量の水素が必要となる。そこでは海外を含めて調達する必要が出てくる」と指摘しており、この段階からエネルギー源として水素の需要が一気に高まりそうだ(図2)。

photo 図2 水素社会実現に向けた方向性(クリックで拡大)出典:経産省 資源エネルギー庁
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