捨てる廃材が水素に変わる、省エネにも役立つ新型リサイクル装置省エネ機器(1/2 ページ)

リサイクル事業を手掛けるアルハイテックがNEDOプロジェクトで進めていたアルミ複合廃材から水素を製造できる実証プラントが完成した。リサイクルが困難なアルミ複合廃材から1時間に2キログラムの水素を製造できる他、油とパルプも取り出すことが可能だ。これらを工場のエネルギーとして再利用することで省エネが図れる。

» 2016年04月25日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 リサイクルが難しいアルミと紙、プラスチックによる複合廃材から水素を製造できる実証プラントが完成した。リサイクル事業を手掛けるアルハイテック(富山県高岡市)が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」のもとで開発を進めていたシステムで、朝日印刷(富山県富山市)の富山工場内に設置した(図1)。2016年4月22日から実証稼働が始まっている。

図1 朝日印刷の富山工場内に設置した実証プラント 出典:NEDO

 朝日印刷の富山工場は医薬品パッケージを生産する同社の基幹工場で、製造過程で発生するアルミ複合廃材を原料として利用する。こうした複合廃材は一般的にリサイクルが難しく、焼却や埋め立てなどの方法で処分されることが多い。

 実証プラントの主要構成機器はパルパー型分離機、乾留炉、水素発生装置の3つ。まず、複合廃材を高速回転するパルパー型分離機に投入して、紙(パルプ成分)を取り出す。次にアルミとプラスチックの状態になった廃材を、乾留炉で加熱してガス・オイルと、高純度のアルミに分離する。最後に回収したアルミを水素発生装置に投入し、アルハイテックが独自開発した特殊アルカリ溶液と反応させて水素を製造する仕組みだ(図2)。

図2 乾留炉と水素発生装置 出典:NEDO

 乾留炉と水素発生装置は、こちらもNEDOプロジェクトの一環として独自開発を進めてきたものだ。乾留炉ではエネルギー効率を向上させるために、電気式の加熱ではなく、プラスチックの乾留(蒸し焼き)によって発生するガスを燃焼させ、その熱を利用する熱風式だ。1時間あたり90キログラムのアルミとプラスチックの複合廃材を処理できる。

 水素発生装置は反応槽にアルミの追加投入ができないという既存装置の課題を、材料形状と供給装置の構造を工夫することでクリアした。連続的に水素を発生させることが可能になり、現時点で1時間当たり2キログラムの水素製造能力を確認している。この水素を燃料電池で発電すると50kW(キロワット)程度の電力になり、工場のエネルギーとして活用する。水素の製造能力は今後継続する実証の中で5キログラムまで引き上げる計画だ。

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