電力市場の自由化を推進する広域機関に、情報システムのトラブルが相次ぐ動き出す電力システム改革(60)(1/2 ページ)

電力システム改革の中で全国レベルの需給調整を担う「電力広域的運営推進機関」の情報システムにトラブルが発生している。4月1日にシステムの運用を開始したものの、事業者間の計画データを正しく送信できない不具合が発生したほか、卸電力取引所と連携する機能が使えない状態だ。

» 2016年05月09日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第59回:「電力会社から乗り換えは68万件に、企業向けのシェアは8%台後半」

 4月1日に始まった電力の小売全面自由化に伴って、2つの重要な情報システムが稼働した。いずれも電力市場の改革を推進する「電力広域的運営推進機関」(略称:広域機関)が運営するシステムである。

 そのうちの1つは電力の購入先を切り替えるための「スイッチング支援システム」で、自由化が始まる1カ月前の3月1日から動き出している。もう1つは全国各地の需給バランスを調整するための「広域機関システム」だが、4月1日の稼働予定日までに一部の機能の開発作業が完了しなかった(図1)。5月に入った現在も問題点を解消できておらず、自由化を促進する業務に影響が出ている。

図1 「広域機関システム」の主要な機能。出典:電力広域的運営推進機関

 広域機関システムは全国の需要と供給の状況を監視する機能のほかに、発電事業者や小売電気事業者による計画をとりまとめて地域間の融通を指示する機能などを備えている。地域間をつなぐ連系線の利用計画を策定することも重要な機能だが、4月1日までに開発が間に合わなかった(図2)。

図2 広域機関による計画策定の流れ(画像をクリックすると従来の方法も表示)。出典:電力広域的運営推進機関

 ようやく4月22日になって広域機関が開発状況を明らかにして、遅れていた連系線の利用計画機能の運用を28日に開始すると発表した。この機能を使わないと卸電力取引所の「1時間前市場」の取引に制限が生じて、発電事業者や小売電気事業者が余剰電力の売買を全国レベルで実施することができない。

 広域機関は28日の正午12時から連系線の利用計画機能を使って1時間前市場の取引を開始できるように準備を進めたが、当日になって中止してしまった。再びシステムに不具合が発生したとみられる。それから1週間が経過した5月6日の時点でも最新の状況を公表できておらず、運用開始の見通しは不明なままだ。

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