シャープが、独自の化合物3接合技術により、太陽電池モジュールで世界最高となる変換効率31.17%を達成した。従来の世界記録は24.1%だったが、これをはるかに上回った形だ。
シャープが新たに開発した太陽電池モジュールは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトの一環として開発したものだ。太陽電池の公的測定機関である産業技術総合研究所(AIST)により、31.17%の変換効率が確認された(図1)。
一般的に、化合物系の太陽電池セルは、インジウムやガリウムなど、複数の元素の化合物を材料とした光吸収層で構成される。光の吸収特性が異なる複数の材料を組み合わせることで、太陽光の波長をより幅広く捉えられるため、高い変換効率を実現できるという仕組みである。
シャープの化合物3接合型太陽電池セルは「インジウムガリウムリン(InGaP)」「ガリウムヒ素(GaAs)」に「インジウムガリウムヒ素(InGaAs)」のボトム層を加えた3つの光吸収層で構成。太陽光をより効率良く電気に変換できる独自の構造を採用したことが特徴である(図2)。
同構造のセル(1.047平方センチメートル)については2013年4月に開発を発表していた(関連記事)。今回はより大きなサイズの太陽電池セルの開発とモジュール化に成功。モジュール(968平方センチメートル)としても世界最高の変換効率を達成した。セルの大型化については「製造条件最適化による基板面内の均一性の向上」とそれに伴う「太陽電池製造基板サイズの大径化」「基板サイズの大径化に適したセル製造プロセスの開発」により実現したとしている。
現在、化合物太陽電池は主に人工衛星などに採用されているが、シャープでは今回の開発成果をもとに、さらなる高効率化と低コスト化を追求し、軽量化が求められる各種移動体の電源など、地上での用途開拓を進めていくとしている。
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