太陽光も生かす「電動」飛行機、2割の費用で飛ぶ自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年06月03日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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欠点は飛行時間なのか

 課題もある。航続距離(飛行時間)が限られることだ。だが、これは欠点とまではいえないのだという。Bye氏によれば、電気推進システムはエンジン推進システムと比較して、設計がスケーラブルであり、これが飛行時間の問題を「解決」する。

 どういう意味か。同氏は現在世界一周飛行を続けている「Solar Impulse 2」を例に挙げた。AEACとは別の企業グループが取り組む実験的な電動航空機である。Solar Impulse 2の主翼全長は72mと巨大であり、ジャンボ機「ボーイング747-8I」よりも長い。主翼を中心に1万7248セルの単結晶シリコン太陽電池セルを貼り付けた。このため、蓄電池と組み合わせた設計を採るSolar Impulse 2には、航続距離の限界がない(夜間飛行を蓄電池で全てまかなう)。

 AEACのSun Flyerは、練習機であるため、全幅は「セスナ機」と同程度だ。搭載できる太陽電池の数が限られる。公開した機体の主翼全長は、10.97m(36フィート)、全長6.55m、全高2.06m。小型の練習機だ。教官と練習生が並んで登場する2座のコックピットを備えている(図3)。

図3 コックピットは横2座構成 出典:AEAC

パイロット養成コスト削減が利点となる

 このような練習機には長い飛行時間は求められていない。こうした理由付けは、Sun Flyer量産機が目指す市場に受け入れられるのだろうか。実際に受け入れられているようだ。

 世界最大規模の航空単科大学の1つである米Spartan College of Aeronautics and Technology*2)はこれまで、Sun Flyer量産機を20機予約していた。今回のコンセプト実証機の公開タイミングで、さらに5機を追加注文した。Sun Flyerを用いた教育トレーニングプログラムも、AEACと共同で開発する。

 米国ではパイロットの需要が高いものの、養成コストが高いため、十分に需要に応えられていない。発表資料の中で、コロラド州政府に属するJay Lindell氏*3)は、Sun Flyerの低運用コストをこのように評価している。Bye氏はパイロット養成に必要な飛行時間は1500時間であり、最大の費用は航空燃料になると指摘した。

 Sun Flyerの技術は、練習機に向いているようだ。より大型の航空機でも利用できるのだろうか。

 今回の発表文の中で、米デンバー大学の1学部であるDaniel Felix Ritchie School of Engineering & Computer Scienceが、AEACと戦略的パートナーシップを結んだことを明らかにしている。スケーラブルなSun Flyerの電気推進システムをさまざまな航空機に適用する研究を進める。

*2) オクラホマ州のタルサ国際空港に隣接して本部キャンパスを置く。87年の歴史があり、9万人以上のパイロットや航空技術者を業界に送り込んでいる。非破壊検査や品質管理、メンテナンスなどの教育プログラムもある。
*3) 州知事の下にあるColorado Office of Economic Development&International Trade(OEDIT)で、Aerospace and Defense Industry Championを務める。



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