再生可能エネルギーの電力が前年比1.5倍に、2015年度の買取量は1200万世帯分:自然エネルギー(2/2 ページ)
2012年7月に固定価格買取制度が始まって以降、全国各地で再生可能エネルギーの導入が活発に進んできた。制度開始から3年半を経過した2016年3月の時点では、電力の消費量が多い関東の各県で導入量が大きく伸びている。全国47都道府県のうち1位は茨城県で、2位が千葉県、さらに6位に栃木県、10位に群馬県が続く(図3)。
図3 導入量が多い都道府県トップ10(2016年3月時点の新規認定分)。単位:キロワット。バイオマスは燃料の比率を反映。資源エネルギー庁の公表データをもとに作成
いずれの県も太陽光発電が圧倒的に多いが、茨城県では風力とバイオマスの伸びも著しい。このほかの上位10県では、風力は鹿児島県と北海道、中小水力は北海道と静岡県の導入量が多く、地熱は鹿児島県だけである。バイオマスは茨城県をはじめ6つの県で1万kWを超える規模の発電設備が運転を開始している。
さらに運転開始前の発電設備を加えた認定量でも茨城県が1位に躍進した(図4)。1年前と比べて55万kWの大幅な増加で、特にバイオマスが31万kWも伸びた。そのほとんどが木質バイオマスである。製材端材や輸入材を燃料に利用する発電設備が多い。
図4 認定量が多い都道府県トップ10(2016年3月時点の新規認定分)。単位:キロワット。バイオマスは燃料の比率を反映。資源エネルギー庁の公表データをもとに作成
第2位は福島県で、認定設備の規模は1年前の時点から45万kWも減少してしまった。太陽光発電の認定取り消し分が数多く発生したためだ。それ以外の風力・中小水力・地熱・バイオマスは着実に増えている。第3位の鹿児島県でも太陽光発電の認定量が減ったが、他県ではさほど伸びていない中小水力と地熱が1000kW前後も増加した。
このほか第7位に宮崎県、第10位に熊本県が入り、九州では引き続き再生可能エネルギーの取り組みが活発だ。宮崎県では風力とバイオマス、熊本県では中小水力の多さが目を引く。同様に再生可能エネルギーの資源が豊富な東北からは、福島県に加えて第6位に宮城県が入った。風力とバイオマスの発電設備が増えている。第8位の北海道でも風力とバイオマスが大幅に伸びた。
- 電力の自給率100%超の市町村が100カ所に、都道府県別では大分県が1位
全国各地で再生可能エネルギーの導入量が拡大して、地域ごとの電力自給率が上昇している。自給率が100%を突破した市町村は2015年3月末の時点で100カ所に達した。都道府県別では地熱が豊富な大分県が38%でトップを走り、続いて秋田県でも30%を超える自給率になっている。
- バイオマス発電で全国1位、太陽光と風力の勢いも衰えず
茨城県の再生可能エネルギーが活発だ。間伐材を利用した木質バイオマス発電や下水の汚泥を発酵させたバイオガス発電が相次いで動き出した。ゴルフ場の跡地には巨大なメガソーラーが生まれ、アウトレットモールでも太陽光発電で電力の供給が始まった。沿岸部の風力発電も増え続けている。
- 地域密着型のバイオマス発電が拡大、太陽光の買取価格は下がり続ける
2016年は再生可能エネルギーの流れが大きく変わり始める。これまで急速に伸びてきた太陽光発電は買取価格の低下や出力制御の対象拡大によって開発計画が減少する見通しだ。地域の資源を活用したバイオマス発電が有利な条件をもとに拡大する一方で、風力・中小水力・地熱発電には課題が残る。
- エネルギーの地産地消で町が変わる、自治体が電力の小売に乗り出す
電力会社を頂点とする従来の市場構造を転換する試みが全国各地に広がってきた。自治体が主導して再生可能エネルギーを増やしながら、同時に地域内で消費できる循環型のエネルギー供給システムを構築する。4月に始まる全面自由化に向けて、自治体が出資する小売電気事業者も続々と生まれる。
- 原子力発電所と火力発電所の選別が進む、2030年に設備半減へ
日本の電力システムが抱える問題点の1つは発電設備の老朽化だ。原子力発電所の再稼働が始まったが、その一方で運転開始から40年以上を経過した設備の廃炉に着手する必要がある。火力発電では2030年に向けてCO2排出量の削減が求められるため、LNG火力と石炭火力の高効率化を急ぐ。
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