横浜市の港湾地域にある「横浜港流通センター」の駐車場では、太陽光発電の電力から水素を製造するシステムが2016年4月に稼働した(図4)。システムの内部には電力を貯める蓄電池と水素を貯めるタンク、さらに水素を使って電力と温水を供給できる燃料電池が組み込まれている。
発電能力は25kW(キロワット)で、供給できる電力量は69kWh(キロワット時)以上を見込む。一般家庭の使用量(1日あたり10kWh)に換算して7世帯分の電力になる。平常時には流通センターの事務所で消費する電力のピークカットに利用して、災害時には津波の避難所になる防災センターに電力を供給する。
横浜市の港湾地域には移動式の水素ステーションもある。JXエネルギーが2015年11月から燃料電池自動車向けにサービスを開始した。同じタイプの水素ステーションは川崎市の「川崎マリエン(川崎市港湾振興会館)」の敷地内にも常駐している(図5)。さらに川崎マリエンでは太陽光発電と組み合わせた水素エネルギー供給システムが稼働中で、災害時には300人分の電力と温水を供給できる。
水素エネルギーはJR東日本の駅にも広がろうとしている。川崎市内の「JR武蔵溝ノ口駅」のホームに水素エネルギー供給システムを設置する計画が進んでいる(図6)。駅舎の屋上に設置した太陽光発電設備から電力の供給を受けて、ホームに設置するシステムで水素を製造して内部のタンクに貯蔵する。
駅の構内は災害時には避難所の役割も果たす。タンクに貯蔵した水素を使って、燃料電池で電力と温水を供給できるようになる(図7)。国内の駅に水素エネルギー供給システムを導入する初めてのケースで、2017年の春に稼働する予定だ。JR東日本が環境配慮型の駅を目指して各地で展開している「エコステ」の新しいモデルに位置づける。
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