水素エネルギーが港のCO2を減らす、国内最大の木質バイオマス発電所も稼働エネルギー列島2016年版(14)神奈川(3/4 ページ)

» 2016年07月26日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

森林資源に依存しない都市型バイオマス発電

 神奈川県ではバイオマス発電の導入も活発になってきた。固定価格買取制度の認定を受けたバイオマス発電の規模は全国で第5位、そのうち運転を開始した発電設備では第2位に入る(図8)。森林の少ない首都圏にもかかわらず、木質バイオマス発電が大半を占めている。

図8 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 東京湾岸に広がる川崎市の工業地帯の一角では「京浜バイオマス発電所」が2015年11月に運転を開始した(図9)。発電能力は49MW(メガワット)で、木質バイオマスだけを燃料に利用する発電設備では国内で最大だ。年間の発電量は3億kWhに達して、一般家庭の8万3000世帯分に相当する電力を供給できる。

図9 「京浜バイオマス発電所」の全景(上)、燃料に利用する木質ペレットとパームヤシ殻(下)。出典:昭和シェル石油、JFEエンジニアリング

 燃料の木質バイオマスは海外から輸入する木質ペレットやパームヤシ殻だ。この発電所を建設した場所には、2011年まで昭和シェル石油グループの製油所が操業していた。燃料を受け入れる港湾設備が整っていて、海外から木質バイオマスを輸入するのに適した立地である(図10)。

図10 「京浜バイオマス発電所」の建設地。出典:昭和シェル石油

 県南部の横須賀市では、地域で発生する木質バイオマスを活用した発電プロジェクトが始まった。東北地方で3カ所の木質バイオマス発電所を運営するタケエイが都市型のバイオマス発電事業として初めて取り組む。

 燃料に利用する木質バイオマスは東北地方のように森林の間伐材が主体ではなく、地元の自治体や造園・建設会社が排出する伐採木や剪定枝が中心になる(図11)。その中には建築物の解体によって生まれる木くずも含まれる。こうして地域内で収集した木質バイオマスから燃料のチップを製造する施設も発電所と合わせて建設する予定だ。

図11 横須賀市の都市型バイオマス発電事業のスキーム(画像をクリックすると拡大)。出典:タケエイ

 発電能力は6.8MWで、年間に1万5000世帯分の電力を供給できる。2018年の運転開始を見込んでいる。発電した電力は固定価格買取制度で売電するが、再生可能エネルギーの電力を地産地消できるように発電事業と合わせて小売電気事業も計画中だ。

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