水素エネルギーが港のCO2を減らす、国内最大の木質バイオマス発電所も稼働エネルギー列島2016年版(14)神奈川(1/4 ページ)

神奈川県の港を中心に水素エネルギーを地産地消する動きが広がってきた。風力発電の電力からCO2フリーの水素を作って燃料電池フォークリフトに供給するプロジェクトが始まる。鉄道の駅でもCO2フリーの水素を製造する計画が進む。バイオマス発電や太陽光発電でも新たな取り組みが活発だ。

» 2016年07月26日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 東京23区に次いで370万人の人口を抱える横浜市がエネルギーの地産地消を推進中だ。再生可能エネルギーに加えて水素エネルギーを積極的に活用する方針で、市内各地で水素エネルギーの導入を加速させている。中でも注目のプロジェクトは、横浜市が運営する風力発電所の電力を使って水素を製造する実証事業である(図1)。

図1 「横浜市風力発電所」に設置する水素サプライチェーン実証設備イメージ。出典:横浜市ほか

 しかも単に水素を製造するだけでは終わらない。風力発電で作ったCO2(二酸化炭素)フリーの水素を同じ臨海地域にある青果市場や物流倉庫まで輸送して、水素で動く燃料電池フォークリフトに供給する。水素の製造から利用までをつなぐサプライチェーンを構築して、CO2フリーの水素を県内で地産地消するモデルづくりを目指す(図2)。

図2 水素サプライチェーン(上)、燃料電池フォークリフトの導入場所と水素輸送ルート(下)。それぞれ画像をクリックすると拡大。出典:横浜市ほか

 この実証プロジェクトには地元の神奈川県と川崎市が参画するほか、水素エネルギーの開発・普及に取り組む岩谷産業、東芝、トヨタ自動車が加わり、官民一体で最先端のシステムを構築していく。水素を製造する水電気分解装置を東芝が供給する一方、風力発電の余剰電力を貯める蓄電システムはトヨタグループがハイブリッド自動車の使用済みバッテリーを再利用する方法で設置する。

 燃料電池フォークリフトは横浜市の青果市場とキリンビールの工場、さらに川崎市内の2カ所の物流センターを加えた合計4カ所に12台を配備する予定だ。各所に水素を輸送する車両には岩谷産業のハイブリッドトラックをベースにした水素充填車を投入して、1台で燃料電池フォークリフト20台分の水素を供給できる体制を作り上げる。

 すでに各システムの設計・製作は始まっている。2016年の秋には2カ所の施設で燃料電池フォークリフトの試験的な運用を開始して、2017年度から全システムを稼働させて4カ所の施設で本格的な実証運用に入る。従来の電気やガソリンで動くフォークリフトからCO2フリーの水素で動く燃料電池タイプへ切り替えると、1日あたりのCO2排出量を80%以上も削減できる見込みだ(図3)。

図3 燃料電池フォークリフト(FCFL)と従来のフォークリフトのCO2排出量(画像をクリックするとエネルギー供給方法も表示)。出典:横浜市ほか
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