停止中の「柏崎刈羽原発」では何が行われているのかエネルギー管理(2/4 ページ)

» 2016年07月29日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

非常時の拠点となる緊急対策室

 免震重要棟の中核となるのが緊急対策室である。非常時にはここが指揮拠点として、あらゆる情報の共有と判断を実行する場として機能する。部屋の中央に掛けられた大型のモニターでは、炉心部分の状況や放射線量など、1〜7号機のプラント情報や、発電所内のさまざまな情報を確認できるようになっている(図5)。無線設備や衛星携帯電話など、非常時に政府や外部自治体と通信を行うための設備も複数備えている。

図5 免震重要棟の中にある緊急対策室。非常時は椅子にかかっているビブスを着る。その色によって誰がどの担当なのかを一目で把握できるようにしている(クリックで拡大)

 東京電力は2016年に入り、緊急対策室の中に新たに本部室を設置した(図6)。周囲から仕切られたガラス張りの部屋で、非常時にはここに各プラント担当者などの責任者が集まって情報共有や対策を検討する。これまで柏崎刈羽原発の指揮系統は発電所長をトップとし、その下にさまざまな役割を担うチームを集約する形式になっていた。これを福島第一原発での事故を受け、本部室の設置とともに迅速な意思決定が行えるよう権限の配置や、体制の見直しを行ったという。

図6 新たに設置した本部室(クリックで拡大)

独自の情報共有ツールを開発

 柏崎刈羽原発では、非常時に円滑に情報を共有するためのツールも独自に開発している。1つが緊急対応時の担当者の発話をテキストでリアルタイムに共有/保存できるチャットシステムだ。福島第一原発の事故が起きた際、現場は本社や政府からの問い合わせ対応に追われ、実作業に遅れが生じた。この反省を生かしたシステムだという。会話は柏崎刈羽原発の関係者だけでなく、本社や政府などの外部関係者も閲覧できるようになっている。こうして外部にも情報をリアルタイム共有できるようにして、不必要なやり取りを減らそうという狙いだ。重要情報を電子記録として保存する役割も担う。

 柏崎刈羽原発の主要設備のデータは本社や政府にもリアルタイムに送信されている仕組みになっている。しかし、万が一情報の送信手段が絶たれた場合でも、重要な情報項目を手動で入力して共有できるシステムも整備している(図7)。

図7 情報共有ツールも独自に開発している(クリックで拡大)

 この他にもタブレット端末を使った手書き入力システムなど、複数のツールを独自に開発している。非常時を想定した訓練などの中でこれらの各ツールを利用し、最適な運用方法や機能の見直しなどを現在進行形で進めているという。

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