次世代の石炭火力発電が試運転、瀬戸内海の島で発電効率40%超を目指す蓄電・発電機器(1/2 ページ)

広島県の離島で2017年3月に開始する「石炭ガス化複合発電」の実証試験に向けて発電設備が試運転に入った。発電能力を商用レベルの16万6000kWまで引き上げて、発電効率40.5%を達成することが目標だ。CO2の排出量を削減しながら、従来の石炭火力と同等以下の発電コストに抑える。

» 2016年08月24日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 大崎上島の位置。出典:大崎クールジェン

 瀬戸内海に浮かぶ大崎上島(おおさきかみじま)で2012年度に着手した「大崎クールジェンプロジェクト」の実証試験が本格的に始まろうとしている(図1)。

 次世代の石炭火力発電の技術開発を担うプロジェクトで、中核になるのは「酸素吹石炭ガス化複合発電」と呼ぶ方式だ。4年以上をかけて建設した実証試験設備が8月22日に試運転を開始した(図2)。2017年3月に開始する実証試験に向けて、発電能力を引き上げながら設備の確認・調整作業に入る。

図2 「酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)実証試験発電所」の全景。出典:大崎クールジェン

 石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)は石炭を燃焼してガスを発生させてから、ガスタービンと蒸気タービンの2種類を組み合わせて発電する(図3)。LNG(液化天然ガス)を燃料に使う火力発電で主流になっている複合発電(コンバインドサイクル)方式を石炭火力にも適用して、発電効率を向上させる技術である。

図3 「酸素吹石炭ガス化複合発電」の仕組み。CO:一酸化炭素、H2:水素。出典:大崎クールジェン

 IGCCには石炭をガス化する際に空気を注入する「空気吹」と酸素を注入する「酸素吹」の2つの方式があり、大崎クールジェンでは酸素吹を採用した。酸素吹のほうが石炭の燃焼温度を高くできるためにガスを発生しやすい利点がある半面、空気分離設備を必要とするため発電効率は空気吹よりも低くなる。

 大崎上島で試運転を開始した酸素吹方式のIGCCは発電能力が16万6000kW(キロワット)の商用レベルの設備である(図4)。実証試験を通じて発電効率(熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる割合)を40.5%まで高めることが目標になっている。

図4 実証試験発電所の設備構成。出典:大崎クールジェン

 現在の石炭火力発電で最先端の「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」の発電効率が40%程度で、それと同等の水準になる。大崎クールジェンのIGCCはガスタービンの燃焼温度が1300℃級で低めに設定されている。2020年代にIGCCを商用化する段階では燃焼温度を1700℃級に高めて、発電効率を46〜50%に向上させる計画だ(図5)。

図5 石炭火力とLNG(液化天然ガス)火力の進化(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
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