下水バイオガスの余剰分が2億円の収入に、処理場で400世帯分の電力を作る:自然エネルギー(2/2 ページ)
仙塩浄化センターには仙台市をはじめ、周辺の市と町を含めて6つの自治体から下水が送られてくる(図3)。下水は水と汚泥に分けたうえで、水は塩素で殺菌して海や川に放流する一方、汚泥は発酵させて容量を減らしてから焼却する方法が一般的だ。この過程で発酵に伴って大量のバイオガスが発生する。
図3 「仙塩浄化センター」の処理区域。出典:宮城県中部下水道事務所
仙塩浄化センターでは年間に245万立方メートルのバイオガスが発生する。そのうち7割を汚泥の焼却炉などの燃料に利用している。余った3割(約80万立方メートル)のバイオガスを発電用に供給する計画だ。
宮城県は県内7カ所で浄化センターを運営している。バイオガス発電を実施するのは仙塩浄化センターが初めてで、今後は他の浄化センターにも広げていく可能性がある。その一方でバイオガスから水素を製造することにも取り組んでいく。
国土交通省が推進する下水の汚泥から水素を製造する実証プロジェクトの一環で、7カ所の浄化センターを対象に実現可能性を調査する(図4)。燃料電池を利用した発電事業や水素ステーションを併設して燃料電池自動車に水素を供給する事業の採算性についても検証する予定だ。
図4 下水汚泥を利用した水素製造イメージ。出典:国土交通省
すでに福岡市の「中部水処理センター」では国土交通省の実証プロジェクトの第1号として、下水バイオガスから水素を製造して燃料電池自動車に供給する設備が2015年11月に稼働している(図5)。生物由来のバイオガスから作った水素は製造段階と利用段階を通して二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンなエネルギーになる。
図5 「福岡市中部水処理センター」の水素ステーション(上)、下水から水素を製造して燃料電池自動車に供給する流れ(下)。出典:福岡市役所
- 下水汚泥から2500万kWhの電力、水素も取り出し燃料電池車が動く
埼玉県は下水処理場で発生する汚泥を利用したバイオマス発電事業を開始する。2019年から発電を開始し、2029年までに発電能力を一般家庭5000世帯分の合計2500万kWhまで拡大する。処理場内には太陽光発電も導入し、さらに汚泥から水素を取り出して燃料電池車への供給にも取り組む計画だ。
- バイオガスで下水処理場に電力と熱、高純度に精製してエネルギー効率84%
兵庫県の神戸市にある下水処理場でバイオガス発電が始まった。下水の処理で発生するバイオガスを98%の高純度に精製した「こうべバイオガス」を燃料に利用する点が特徴だ。電力と熱を同時に作るコージェネレーションシステム24台を使って、1300世帯分の電力と1600世帯分の熱を供給できる。
- 下水から作ったCO2フリーの水素、燃料電池車を満タンにして5500円
福岡市が世界で初めて下水のバイオガスから作った水素の供給サービスを開始した。市内の下水処理場に併設した水素ステーションで、1キログラムあたり1100円で提供する。市販の燃料電池車は水素5キログラムで満タンになる。下水バイオガスから1日に65台分の水素を供給することができる。
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