下水バイオガスの余剰分が2億円の収入に、処理場で400世帯分の電力を作る自然エネルギー(1/2 ページ)

宮城県の仙台市を中心に6つの市と町の下水を処理する浄化センターでバイオガス発電の取り組みが始まる。下水の処理工程で発生するバイオガスを利用して400世帯分の電力を作る計画だ。県が民間の事業者に委託して2018年度中に開始する。バイオガスの売却収入は20年間で2億円を見込む。

» 2016年09月01日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 太平洋に面した仙台港の近くに、宮城県が運営する「仙塩(せんしお)浄化センター」がある(図1)。1978年に稼働した県内で最大の処理能力がある浄化センターで、1日に20万立方メートルにのぼる下水を処理している。

図1 「仙塩浄化センター」の全景。出典:宮城県中部下水道事務所

 大量の下水を処理する工程で生まれるバイオガス(消化ガス)はセンター内の施設で燃料に利用しても余るため、従来は焼却してきた。この余剰バイオガスを使って新たに発電事業を開始する計画だ。公募で選ばれた新潟県の大原鉄工所がバイオガス発電設備を建設・運営する。大原鉄工所は新潟市の浄化センターなどにバイオガス発電設備を導入した実績がある(図2)。

図2 「新潟浄化センター」のバイオガス発電設備(上)、処理の流れ(下、画像をクリックすると拡大)。出典:新潟県流域下水道事務所

 仙塩浄化センターでは1台あたり50kW(キロワット)の発電能力がある発電機7台を導入する。合計で350kWになり、年間の発電量は144万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間300kWh)に換算して400世帯分に相当する。2016年11月から設計・建設に着手して、2018年度内に運転を開始する予定だ。

 発電した電力は固定価格買取制度を通じて売電する。バイオガス(メタン発酵ガス)による電力の買取価格は1kWhあたり39円(税抜き)に設定されていて、年間に5600万円の売電収入を得られる見通しだ。買取期間の20年間の累計では11億円を超える。

 このうち宮城県はバイオガスを発電事業者に提供して約2億円の収入を想定している。従来は単に焼やして処分していたバイオガスが再生可能エネルギーに生まれ変わり、自治体に新たな収入をもたらしてくれる。

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