ガス小売全面自由化へ動きが加速、電力と同様の競争環境を整備法制度・規制(2/3 ページ)

» 2016年09月05日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

LNGの輸入量は電力会社が6割以上

 電力と都市ガスの市場構造で大きく違う点は、供給する資源のシェアにある。電力市場では電力会社みずからが大規模な発電所を運営してほぼ独占的に電力を製造している。対して都市ガス市場では、原料になるLNGの輸入量の6割以上をガス会社ではなくて電力会社が抑えている状況だ(図4)。

図4 都市ガスの市場構造(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 電力会社は火力発電用に大量のLNGを調達する。電力の販売量が低下する中で、余剰のLNGを都市ガスとして販売するチャンスが広がった。ただし需要家までガスを供給するための導管はガス会社が保有・運営している。

 全国の導管の5割以上を東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの3社が地域ごとに独占して運営する状態だ。他の地域でも既存のガス会社が導管を運営しているため、電力会社を含む新規参入の事業者はガスの輸送業務を委託することになる(図5)。電力事業でも電力会社の送配電網を利用する点で同様だが、ガスの導管網は地域全体をカバーしていない。

図5 都市ガスと電力の事業構造の比較(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 現在のところガスの導管網が整備されている区域は全国の国土の6%弱に過ぎない。東京・大阪をはじめ大都市圏の周辺地域に限られている(図6)。世帯数では67%をカバーするものの、都市部を除くとLPガスのシェアが圧倒的に高くなる。広い地域を対象に電力とセットで販売するためには、都市ガスとLPガスの両方を供給できる体制を整える必要がある。

図6 都市ガス導管網の整備状況。出典:資源エネルギー庁

 すでに東京電力をはじめLPガス会社と提携してセット販売に乗り出す動きが始まっている。今後は地域を越えて電力・都市ガス・LPガス会社の提携が広がることは確実だ。大手の事業者を中心に各地域で陣取り合戦が激しくなっていく。都市ガスの小売全面自由化を機に、電力の小売競争が加速する可能性も大きい。

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