自治体や民間企業が地域の再生に向けて水力発電に取り組む一方で、岐阜県を供給エリアに含む中部電力も新しい水力発電所を相次いで開発している。特に注目すべきは2016年3月に全面運転を開始した「徳山水力発電所」である(図8)。最近では珍しい大規模な水力発電所で、1号機と2号機を合わせて16万1900kWの発電能力がある。中部電力の水力発電所の中では揚水式を除くと最大だ。
徳山水力発電所は2008年に完成した「徳山ダム」からの水流を利用する。ダムの中にある取水塔から導水路と水圧鉄管路を通して、ダムの直下にある発電機まで水を送り込む(図9)。その間の落差は1号機が182メートル、2号機が146メートルに及ぶ。発電機は地下に設置されていて、発電能力の大きい1号機のほうが下部にある構造だ。
1号機と2号機では使い方が違う。1号機(発電能力13万9000kW)は電力の需要が多い時に大量の水を使って発電する一方、2号機(同2万4300kW)はダムの下流の環境維持のために放流する水量で電力の供給を続ける。再生可能エネルギーでも需要に合わせて発電量を調整できる体制になっている。
特に最近は河川の環境維持に必要な「河川維持流量」を利用した小水力発電の取り組みが活発に進んでいる。2016年6月に運転を開始した「丹生川(にゅうがわ)水力発電所」は、中部電力が県営ダムの直下に建設した2つ目の小水力発電所である(図10)。47メートルの落差を生かして最大で350kWの電力を供給できる。年間の発電量は210万kWhを見込んでいて、一般家庭の580世帯分に相当する。
中部電力はグループ会社のシーテックのプロジェクトを含めると、河川維持流量を利用した小水力発電所を岐阜県内の4カ所で稼働させている。いずれも2015年以降に運転を開始した。さらに中部電力グループは温泉で有名な下呂市(げろし)にあるダムの直下でも同様の小水力発電所を建設する計画で、2018年7月に運転を開始する予定だ。
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