全国一の水流を生かして小水力発電、山奥の古い農業用水路も電力源にエネルギー列島2016年版(21)岐阜(4/4 ページ)

» 2016年09月13日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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太陽光パネルの下でサトイモを栽培

 岐阜県は水力発電の導入可能量が全国で最も大きくて、年間に138億kWhの電力を生み出せるポテンシャルがある。実に380万世帯分の使用量に匹敵する電力で、岐阜県の総世帯数(75万世帯)の5倍にもなる。すでに7割が開発済みだが、残りの3割で100万世帯分を超える。

 このほかに森林の面積が全国で5位、年間の日照時間でも全国で8位に入る。森林地帯が広がる県の中部から北部にかけて木質バイオマス発電が始まる一方、南部の平野では太陽光発電が活発になってきた。県内には温泉も数多く分布していて、北部の奥飛騨温泉では地熱発電の開発プロジェクトが進んでいる。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備も風力を除いて拡大中だ(図11)。

図11 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 太陽光発電では農地を利用した営農型の導入事例が南部を中心に増えてきた。各務原市(かがみはらし)の個人農家が2014年から実施している先行事例では、2400平方メートルの農地に50kW分の太陽光パネルを設置した(図12)。支柱の上に細長いパネルを設置する方法で、農地の遮光率を30%程度に抑えている。パネルの下ではサトイモや小松菜を栽培する。

図12 営農型の太陽光発電の導入例(各務原市の個人農家)。出典:農林水産省

 年間の発電量は6万kWhを見込んでいて、固定価格買取制度で売電すると1年間に200万円前後の収入になる。農作物の栽培は通常に近い状態で続けることができるため、農家の所得は従来よりも増える。導入費用は1800万円かかったが、農家が日本政策金融公庫の融資を受けながら全額を負担した。10年程度で採算がとれる見通しだ。

 木質バイオマス発電では林業や製材業と連携した取り組みが3つの市をまたいで始まっている。森林から伐採する木材を品質によってA材からD材まで4種類に分類して、製品に使えないC材とD材を発電に利用する体制を構築した(図13)。従来は森林に放置していたC・D材の利用量が大幅に増えることで、森林の保全に役立つのと同時に森林の所有者の収入も増加する。

図13 森林資源の活用事例。出典:岐阜県林政部

 県内で初めて未利用の木材を燃料に使った木質バイオマス発電所が、南部の瑞穂市(みずほし)で2014年12月に運転を開始した。発電所に隣接して木質チップの製造工場があり、森林から集めたC・D材を燃料に加工している(図14)。発電能力は6250kWと大きくて、1日24時間の連続運転で年間に330日稼働する。送電できる電力の規模は1万1000世帯分になり、瑞穂市の総世帯数(2万世帯)の半分以上をカバーできる。

図14 木質バイオマス発電所(岐阜バイオパワー)の全景。出典:岐阜県林政部

 岐阜県では全国一の水力を中心に、太陽光から地熱、バイオマスまで含めて地域の資源を活用した発電設備が順調に拡大中だ。内陸県の特色を生かして再生可能エネルギーによる電力の供給量がますます増えていく。

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2015年版(21)岐阜:「小水力発電で村おこし、農業用水路が新たな価値を生む」

2014年版(21)岐阜:「太陽光と小水力で農業を変える、ソーラーシェアリングが始まる」

2013年版(21)岐阜:「清流の国に広がる小水力発電、山沿いと平地でも落差を生かす」

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