降水量の多い岐阜県は水力エネルギーの利用可能量が全国で最大だ。農山村では古い農業用水路を改修して小水力発電の取り組みが活発に進む。ダムに新設する水力発電所も続々と運転を開始した。農地を利用した太陽光発電や地域の森林資源を生かした木質バイオマス発電も広がりを見せる。
岐阜県の東南端に位置する中津川市は中央に木曽川が流れている。豊かな水を利用して農林業が盛んな地域で、起伏の激しい山間部には農業用水路が広がる。その中で大正時代に造られた古い用水路があり、老朽化が進んで改修が必要になっていた。約900メートルに及ぶ用水路の改修と合わせて、水流の落差を生かした「落合平石(おちあいひらいし)小水力発電所」を建設して2016年4月に運転を開始した(図1)。
改修した用水路の落差は64メートルになり、最大で126kW(キロワット)の電力を供給できる。年間の発電量は95万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して260世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に3200万円の収入を得られる想定だ。買取期間の20年間の累計では6億4000万円になる。
この小水力発電プロジェクトは飛島建設とオリエンタルコンサルタンツの2社が共同で発電事業者になって、地元の落合平石地区と中津川市が連携しながら推進した(図2)。農業用水路の改修を含めた総事業費は2億5000万円かかっている。
発電事業者の2社は売電による収入を得る一方で、用水路を管理する落合平石地区に水路の補修や発電設備の清掃点検作業を委託する。地元の負担なしに農業用水路を改修したうえに、新たな作業を生み出して地域に利益をもたらす仕組みだ(図3)。小水力発電を実施することで農山村の活性化につなげる新しいモデル事業に位置づける。
小水力発電所の建屋の中では、赤い色の水車発電機が稼働している。水力発電が盛んなチェコ製で、横軸を中心に円筒型の水車が回転する横軸クロスフロー式だ(図4)。水流が交差する仕組みになっていて、少ない水量でも大きな水力を生み出せる利点がある。落差が大きくて水量が少ない場所に向いている。
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