消費者は二の次、国の経済事情で自由化に進んだポルトガル:電力自由化、先行国はこう動いた(3)(2/5 ページ)
2012年に低圧で契約をしている顧客向けの規制価格が撤廃されたことで電力自由化の最終プロセスを完了した(法令75/2012)。これにより新電力は、現行の電気料金よりも安い電気料金の提供を開始することになる。顧客を引き付け、契約をとるためのキャンペーンとマーケティングが展開されるようになった。では、ポルトガルの電力事情と合わせてここまでの主な出来事を振り返ってみよう。
- 1970年代:ポルトガルの電力市場が国有化。EDP社が全てのオペレーションを担う国営独占企業となる
- 1996年:EUにエネルギー市場の自由化法案により、ポルトガルでも発送電の分離が開始される
- 2000年代:電力自由化への準備が開始される。2006年の電力自由化の法案へつながる
- 2000年代前半:スペインのIberdrola(イベルドローラ)や、ENATといった新電力会社がポルトガル電力市場でオペレーションを開始
- 2006年:電力市場自由化
- 2007年:国営の配送電企業(REN:Redes Energeticas Nacionais)がIPO株式上場で民営化される
- 2011年:EDPが完全に民営化される
- 2012年:RENが完全に民営化される。25%の株式が中国の国家電網、15%がオマーン・オイルに売却される(IMFとEUからの救済をうけるため)
- 2012年:10.35kVA(キロボルトアンペアー)以上および10.35kVA以下で契約している一般契約者向けの市場が自由化。低圧契約者向けの規制価格が完全撤廃
図1 ポルトガルの電力自由化の流れ 出典:セレクトラ
日本と同様にポルトガルでも規制価格は自由化以降にすぐに撤廃されたわけではなく、移行期間が設けられた。2006年に電力自由化が開始され、それぞれ2012年6月30日に10.35kVA以上、2012年12月31日に10.35kVA以下の契約者向けの規制料金が撤廃され、以降2年間は規制料金が保たれることになった。さらにその他のヨーロッパ諸国と同様に、社会的弱者・低所得者に対しては規制価格よりも安い設定となっている料金プランは引き続き残された。
ポルトガルで電力自由化により起きた変化としては主に以下の点が挙げられる。
- ポルトガルの電力システムのうち、2000年に発電と送電部門が完全に分離され、親会社が2つに分かれた。同年度に大規模な停電が起きていたために、この分離業務は加速度的に行われた
- 分離により発電と送配電の効率があがった
- 新たに再生可能エネルギーでの発電を行う企業が増え、全体的な再生可能エネルギーによる発電量が増えた
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