2016年4月の電力小売全面自由化により日本の電力市場は大きく変容を遂げようとしている。ただ世界には多くの電力自由化先行国が存在する。先行した国々ではどういう変化が起こったのか。こうした変化を紹介するとともに日本のエネルギー産業における将来像を探る。第3回は、ポルトガルの動向を紹介する。
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ポルトガルでは電力自由化以前には、国営の電力会社として唯一の企業だったEDP(Energias de Portugal)が発電と送電、小売りの全てを行っていた。しかし、1996年と2003年にEU(欧州連合)により電力自由化に関する法案(2003/54/EC)が作成された。これに従い、ポルトガルにおいても法令172/200のもと、電力自由化の枠組みが作られた。
こうした自由化の動きにより、国営電力会社だったEDPも発電と小売りの2つのセグメントに分けられた。最終的に2012年に電力市場が完全自由化(規制価格の完全撤廃)され、消費者は自由に電力会社を選べるようになった。
ポルトガル本土では電気の契約者は約620万件。このうち、低圧で契約している一般家庭の消費者がほとんどで、約2万3500件が中低圧、そして350件の顧客が高圧・超高圧での契約となっている。また、ポルトガルでの電気の年間消費量は490億kWh(キロワット時、2013年)である。ちなみに、マデイラ諸島、アゾレス諸島においては新電力は新規参入せず、エネルギー規制機構(ERSE:Entidade Reguladora dos Servicos Energeticos)による規制料金が残された状況である。
基本的な考えとしては、電気は公共性の高いものであるという姿勢であり、電力の自由化の枠組みでは、以下の3つの項目が各電力会社に義務付けられている。
電気料金およびガス料金の決定を行っていたERSE(エネルギー規制機構)は、電力市場の自由化以降は社会的弱者や低所得者向けの電気料金の設定業務を担っている。
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