年間5000万羽の鶏の糞で発電、1万3000世帯分の電力を作る自然エネルギー(1/2 ページ)

岩手県の鶏肉生産会社が鶏の糞を燃料にバイオマス発電を開始した。周辺地域で飼育する年間5000万羽を超える鶏の糞を集約して、ボイラーで焼却して蒸気で発電する仕組みだ。焼却後の灰にはリンやカリウムが多く含まれているため、農作物の肥料に再利用してバイオマス資源の循環を推進する。

» 2016年10月05日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 軽米町の位置。出典:軽米町役場

 岩手県を中心に鶏肉の生産・販売を手がける十文字チキンカンパニーが、県北部の軽米町(かるまいまち)に大規模なバイオマス発電所を建設した(図1)。隣接する青森県を含めて170カ所の飼育農場で発生する鶏の糞を燃料に利用する。

 周辺に数多くの飼育農場がある山間部の一角に、「十文字チキンカンパニーバイオマス発電所」が9月28日に完成した(図2)。発電能力は6.25MW(メガワット)で、10月中に試運転を実施して、11月初めから本格的に稼働する予定だ。

図2 「十文字チキンカンパニーバイオマス発電所」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:十文字チキンカンパニー

 1日24時間の連続運転で1年間に315日の稼働を想定している。年間の発電量は4725万kWh(キロワット時)になる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万3000世帯分に相当する電力で、軽米町の総世帯数(3300世帯)の4倍に匹敵する。

 発電した電力のうち1.45MWを発電所の内部で消費して、残りの4.8MWを固定価格買取制度で売電する方針だ。年間の売電量は3628万kWhを見込んでいる。廃棄物を使ったバイオマス発電の買取価格は1kWhあたり17円(税抜き)を適用することから、年間の売電収入は6億円強になる。

図3 飼育農場の所在地。出典:十文字チキンカンパニー

 十文字チキンカンパニーは岩手県と青森県の飼育農場から鶏の糞を集約する(図3)。170カ所の飼育農場では年5回のサイクルで、合計5000万羽を超える鶏を飼育している。大量の鶏が毎日排出する糞を燃料に利用できるため、バイオマス発電で課題になる燃料の安定確保にも支障はない。

 発電所では1日あたり400トンにのぼる鶏の糞を燃料に利用する計画だ。十文字チキンカンパニーが扱うブロイラーの糞には約3割の敷料(おがくず)が入っているため、そのまま燃焼させることができる。糞の含水率は40〜65%の範囲で、そのうち55%以下のものを燃料に利用する設計になっている。

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