このナノ多孔質グラフェンは窒素、硫黄、リン原子同士が固まることなく分散し、600m2/gと大きな比表面積を持ち、孔半径が25〜100nmまで調節可能な構造体を持つ結晶性の高いグラフェンであることが分かった。これは典型的な平板金属電極に比べ、同体積で350倍程度まで表面積が増大していることになるという(図2)。
図2 化学ドープしたナノ多孔質グラフェンの水素発生試験結果。G:化学ドープしていないナノ多孔質グラフェン、N:窒素ドープ、P:リンドープ、S:硫黄ドープ、SP:硫黄リンドープ、NS:窒素硫黄ドープ、NP:窒素リンドープ、NSP:窒素硫黄リンドープしたものをそれぞれ示している 出典:東北大学研究グループはこうして作製した化学ドープナノ多孔質グラフェンを電極として用い、酸性水溶液中で水素発生試験を行った。金属を使用しない化学ドープした3次元ナノ多孔質グラフェン電極は、ドープ種類とそのドーピング量が増えるにつれて水素を発生させるために必要な電圧が減少した。現時点で白金と同等の水素発生能力を保つためには、3倍程度の電圧が必要になるが、さらなる性能向上と生産プロセスの改善を続けることで、採算性が取れる持続可能な水素発生電極の実現が期待できるとしている。
今回確立した3次元ナノ多孔質グラフェンの幾何学的な歪みが高いことを利用した化学ドープ濃度を向上させる手法は、炭素材料を用いる燃料電池や蓄電池など他のエネルギー分野に対しても金属を使用しない触媒能力を高める指針を与えるものであり、他の分野の材料開発に対しても非常に有用な材料設計指針になるとした。研究グループは今後多孔質グラフェンの製品化を目指し企業と連携を進めていく予定だ。
水から水素を安く大量に製造する手法、3次元構造の炭素シートで
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