レアメタル不要の水素製造装置を実現、多孔質グラフェンの量産近づく:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
このナノ多孔質グラフェンは窒素、硫黄、リン原子同士が固まることなく分散し、600m2/gと大きな比表面積を持ち、孔半径が25〜100nmまで調節可能な構造体を持つ結晶性の高いグラフェンであることが分かった。これは典型的な平板金属電極に比べ、同体積で350倍程度まで表面積が増大していることになるという(図2)。
図2 化学ドープしたナノ多孔質グラフェンの水素発生試験結果。G:化学ドープしていないナノ多孔質グラフェン、N:窒素ドープ、P:リンドープ、S:硫黄ドープ、SP:硫黄リンドープ、NS:窒素硫黄ドープ、NP:窒素リンドープ、NSP:窒素硫黄リンドープしたものをそれぞれ示している 出典:東北大学
研究グループはこうして作製した化学ドープナノ多孔質グラフェンを電極として用い、酸性水溶液中で水素発生試験を行った。金属を使用しない化学ドープした3次元ナノ多孔質グラフェン電極は、ドープ種類とそのドーピング量が増えるにつれて水素を発生させるために必要な電圧が減少した。現時点で白金と同等の水素発生能力を保つためには、3倍程度の電圧が必要になるが、さらなる性能向上と生産プロセスの改善を続けることで、採算性が取れる持続可能な水素発生電極の実現が期待できるとしている。
今回確立した3次元ナノ多孔質グラフェンの幾何学的な歪みが高いことを利用した化学ドープ濃度を向上させる手法は、炭素材料を用いる燃料電池や蓄電池など他のエネルギー分野に対しても金属を使用しない触媒能力を高める指針を与えるものであり、他の分野の材料開発に対しても非常に有用な材料設計指針になるとした。研究グループは今後多孔質グラフェンの製品化を目指し企業と連携を進めていく予定だ。
- 水から水素を安く大量に製造する手法、3次元構造の炭素シートで
水素をエネルギー源に利用する取り組みが急速に拡大する中で、重要な課題の1つが水素の製造コストを低下させることにある。水を効率よく電気分解できれば、CO2フリーの水素を安く大量に製造することが可能になる。3次元構造の炭素シートを使った水素製造法の研究開発が進んできた。
- 日本がリードするナノ炭素材料を次世代省エネ部材へ、NEDOが新事業
軽量かつ高強度、そして電気や熱の伝導性が高いなど優れた特性を持つナノ炭素材料は、高機能な省エネ部材を実現する原料として期待されている。NEDOはナノ炭素材料を利用した次世代省エネ部材の実用化に向けた事業として、新たに6つのテーマに助成を行う。
- 太陽光による水素製造、宮崎で世界最高効率24.4%を達成
再生可能エネルギーを利用したCO2フリーな水素製造が注目されている。実用化にはエネルギーの変換効率が課題で、世界中で効率向上に向けた研究開発が進んでいる。東京大学と宮崎大学はこのほど実際の太陽光による電力から水素を生成し、太陽光エネルギーの24.4%を水素として貯蔵することに成功したと発表。これは世界最高効率になるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.