世界に広がる再生可能エネルギーの中で導入量が最も多いのは風力発電だが、日本では伸び悩んでいる。発電コストが世界の平均と比べて1.6倍も高いことが大きな要因だ。2030年までに発電コストを8〜9円/kWhへ引き下げて、固定価格買取制度(FIT)に依存しない電源へ自立させる。
風力発電は太陽光発電を上回る勢いで世界各地に拡大中だ。導入量の増加に伴って発電コストが下がり、いまや全世界の再生可能エネルギーは風力発電を中心に動いている(図1)。ところが日本では発電コストが高いこともあって流れに取り残されてしまった。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が毎年度末に実施している調査によると、国内の風力発電の導入量は2016年3月の時点で312万kW(キロワット)、風車の設置数は出力10kW以上が2100基ある(図2)。21世紀が始まった2001年から着実に拡大してきたが、2010年以降に伸びが鈍化してしまった。世界の潮流と逆の状況だ。
そこで日本政府は「風力発電競争力強化研究会」を設置して、導入量の拡大に向けた対策をとりまとめた。10月18日に公表した報告書では2つの方向性を示している(図3)。第1に事業者が風力発電に投資しやすい環境を整備する。第2に国内の風力産業を強化して、発電コストを世界の平均水準まで引き下げる。
政府が目指す風力発電のコストは1kWh(キロワット時)あたり8〜9円だ(図4)。現在は13.9kWhで、35〜40%程度のコスト削減が必要になる。すでに世界の平均値は8.8円/kWhまで下がり、そろそろ限界に近づいている。日本も2030年までに同等の水準まで引き下げて価格競争力を高めていく。
風力発電のコストが8〜9円まで下がると、火力発電のコストと変わらなくなる。固定価格買取制度(FIT)で高い価格を設定して買い取らなくても、火力発電と同じように売電できる状態だ。コストの面では風力発電の導入を妨げる要因がなくなる。
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