風力発電のコストを世界水準の8〜9円に、FIT依存から自立へ : 蓄電・発電機器 (3/3 ページ)
さらに運転維持費の低減にも取り組まなくてはならない。国内と海外では年間の運転維持費に2倍以上の開きがある(図8)。日本では運転維持費の7割以上を修繕費が占める。修繕費は発電設備の「運用管理・保守(O&M:Operation & Maintenance)」にかかるコストで、定期的な点検や補修を含む。
図8 風力発電の運転維持費の内訳。出典:NEDO(Bloomberg社の資料をもとに作成)
運転維持費が海外よりも高い理由として、研究会の報告書では風力発電のO&Mが産業として確立できていない問題を指摘している。O&Mに携わる人材を育成できていないことに加えて、部品の供給体制も整備できていない。さらに故障が発生した時の保険制度が不十分で、毎年の運転維持費が高くなる要因になっている。
これに対して欧米では主要な風車メーカーがO&Mに力を入れているほか、メーカーと独立のサードパーティの事業者が価格競争力のあるサービスを提供している(図9)。各社は情報通信技術を駆使した発電設備の遠隔監視に取り組みながら、O&Mの効率化を推進してきた。
図9 風力発電の市場構造(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
すでに欧米では「スマートメンテナンス」の導入が活発に始まっている。発電設備の各部にセンサーを設置して、振動や温度のデータから異常を素早く感知する仕組みだ(図10)。さらにセンサーから収集したデータをもとに、部品のメンテナンスや交換が必要な時期を予測して事前に手配する。
図10 風力発電設備を対象にした「スマートメンテナンス」の実施イメージ。CMS:状態監視システム、SCADA:監視制御システム、LAN・WAN:ローカルエリアネットワーク・ワイドエリアネットワーク、DB:データベース。出典:資源エネルギー庁
日本ではNEDOが2013年度にスマートメンテナンスの研究開発に着手して現在も継続中だ。風力発電にスマートメンテナンスの仕組みを導入できれば、海外に比べて割高な運転維持費を確実に低減できる。事故やトラブルを未然に防いで稼働率を高める効果も期待できる。
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