再生可能エネルギーを100万kW創出、ため池や水道管でも発電エネルギー列島2016年版(28)兵庫(2/4 ページ)

» 2016年11月01日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

下水処理場で高濃度のバイオガスを作る

 兵庫県では2013年度に「再生可能エネルギー100万キロワット創出プラン」を打ち出して、太陽光発電を中心に導入プロジェクトを推進してきた。2020年度までの8年間で目標を達成する計画だったが、わずか2年半のあいだに目標を上回る102万kWの導入量に達して、さらに拡大の勢いは止まらない(図5)。

図5 「再生可能エネルギー100万キロワット創出プラン」の進捗。出典:兵庫県農政環境部

 太陽光発電に続いて導入量が増えているのはバイオマス発電だ。神戸市では下水処理場で作るバイオガスを利用した発電事業に力を入れている。市内の7カ所にある下水処理場を対象に「こうべバイオガス事業」を展開中だ(図6)。下水の処理過程で発生するバイオガスを高濃度に生成して、天然ガス自動車の燃料に供給するほか、ガスコージェネレーション(熱電併給)で電力と熱を供給する。

図6 「こうべバイオガス事業」の展開計画(画像をクリックすると拡大)。出典:神戸市建設局

 最新の導入事例は「西部処理場」に見ることができる。2016年3月に24台のコージェネレーションシステムが運転を開始した(図7)。1台あたりの発電能力は25kWで、合計600kWの電力を供給する。年間の発電量は1300世帯分に相当する460万kWhを見込んでいる。

図7 「西部処理場」の全景(上)、バイオガス発電設備と処理の流れ(下)。出典:神戸市建設局

 発電した電力は処理場の中で自家消費して、電力会社から購入する電力量を3割減らすことができる。同時に発生する熱を使って温水も作り、下水の汚泥を発酵させる消化タンクの加温に利用する。大都市の下水を生かして、CO2(二酸化炭素)の排出量とエネルギーの購入費を削減する取り組みだ。

 神戸市は2025年までに7カ所の下水処理場すべてでバイオガスを100%活用する方針を掲げている。7カ所のうち5カ所は地下に埋設した下水道管のネットワークでつながっている。複数の下水処理場に汚水を分散できて、災害時や改築時にも下水の処理を継続できる。1996年に発生した阪神大震災の教訓を生かして、災害に強い安定した下水処理体制を構築した。

 バイオマス発電は県内の工場にも拡大する。森林が広がる丹波市に本社と工場がある兵庫パルプ工業では、紙の原料になるパルプの製造工程で発生する廃液を利用して20年以上も前からバイオマス発電に取り組んできた(図8)。新たに大規模な発電設備を工場の敷地内に建設して、木質バイオマス発電へ範囲を広げていく。

図8 パルプ製造工場のバイオマス発電の流れ。出典:兵庫パルプ工業

 パルプの原料に適さない林地残材や製材所で発生する木の皮などを集約して発電に利用する計画だ。2017年12月に運転を開始する予定で、発電能力は22MWと大きい。年間に300日の稼働を想定すると、発電量は1億7500万kWhに達する。一般家庭で約5万世帯分に相当する電力になる。投資額は80億円にのぼり、発電した電力は固定価格買取制度で売電する。

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