バイオマス発電で林業に活力を、山深い村には小水力発電が復活エネルギー列島2016年版(29)奈良(3/3 ページ)

» 2016年11月08日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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巨大メガソーラーの建設が相次いで始まる

 太陽光発電の取り組みも広がってきた。奈良県内で砕石事業などを手がける山本商事が6カ所の太陽光発電所を運転中だ。6カ所の発電能力を合わせると5MWを超える規模になる。県中部の橿原市(かしはらし)で2016年1月に稼働した「橿原ソーラーパーク」が最も新しくて1.1MWの発電能力がある(図9)。

図9 「橿原ソーラーパーク」の太陽光パネル(画像をクリックすると水平に拡大)。出典:山本商事

 大学の敷地の中でも太陽光発電が始まっている。奈良大学が北部の奈良市内に所有するグラウンドと駐車場の土地を利用してメガソーラーが稼働中だ(図10)。合計で1万枚の太陽光パネルを設置して2.5MWの発電能力がある。

図10 「奈良大学太陽光発電所」の全景。出典:奈良大学

 オリックスグループが奈良大学から土地を賃借して2016年2月に運転を開始した。年間に263万kWhの電力を供給できる見込みだ。奈良大学は土地の使用料を得る一方で、地元の小中学生を対象にした環境教育にも利用していく。

 オリックスは奈良市の南側に隣接する天理市でも、九電工と共同でメガソーラーを建設中だ。天理市が工業団地に予定していた25万平方メートルの土地を賃借して、合計9万枚の太陽光パネルを設置する(図11)。

図11 「天理市ソーラーパーク1号発電所」の建設区域。出典:天理市総合政策課

 発電能力は23MWに達して、奈良県で最大のメガソーラーになる。2017年2月に運転を開始する予定で、年間の発電量は2480万kWhを見込んでいる。一般家庭の6900世帯分に相当する。天理市には土地の賃貸料として年間に4300万円が入ることになっている。

 さらに大規模なメガソーラーの建設が中部の吉野町で始まっている。もともとゴルフ場を開発する計画だった35万平方メートルの林地が建設予定地だ。途中で開発計画がとん挫したために、吉野町が買い取って太陽光発電の用地に転換した(図12)。公募を通じて選定した日本アジア投資とリニューアブル・ジャパンが共同で発電事業を推進する。

図12 「吉野町太陽光発電所」の建設予定地。出典:日本アジア投資

 発電能力は天理市で建設中のメガソーラーを上回る30MWを予定している。2018年1月に運転を開始する計画で、完成すると奈良県で最大のメガソーラーになる。年間の発電量は3200万kWhを見込んでいて、8900世帯分の電力を供給できる。吉野町の総世帯数(3400世帯)の2.6倍に匹敵する。

 これまで奈良県内には再生可能エネルギーの発電設備が他県に比べて少なかった。県の中央に広がる吉野地域に大規模なバイオマス発電所と太陽光発電所が誕生して、再生可能エネルギーの地産地消が進み始める。

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2015年版(29)奈良:「歴史のまちに小水力と太陽光発電、自然のエネルギーから地域を再生」

2014年版(29)奈良:「内陸県に広がる太陽光とバイオマス、導入目標を60MW上乗せ」

2013年版(29)奈良:「北の大和盆地で小水力発電、南の吉野山地にメガソーラー」

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