今回の研究ではこの2種類の手法を組み合わせた。まず、ガリウムヒ素基板の上に規則正しくガリウムインジウムリンを積層(エピタキシャル堆積、図4左)。次にこの基板と、シリコン基板をメカニカルスタックで接合した(図4中央)。最後にガリウムヒ素基板を化学エッチングして薄膜とした。
このときに利用したのが、先ほどのダイレクトウエハーボンディングプロセスだ。同技術は、プロジェクターやセンサーなどに使われるMEMS(微小電気機械システム)などのマイクロエレクトロニクス業界で量産工程に使われている。
接着剤を使わずに接合することが特徴だ。具体的にはそれぞれ基板の表面をプラズマ活性化させた後、圧力を加える。こうして真空中でそれぞれの基板上の原子が直接接合し、完全に1枚にまとまった基板(モノリシックデバイス)が完成する。
同研究所でチームリーダーを務めるJan Benick氏は、発表資料の中で次のように述べている。「成功への鍵は、シリコン太陽電池セルの製造プロセスを見つけることにあった。セルの表面が滑らかで高濃度にドープされた表面を作り出すことが課題だった。こうなっていればウエハー・ボンディングに適しており、シリコンと(GaInPなどの)III-V族半導体のさまざまな異なる要求を満たすことができる」。
今回の接合装置を適用すると、太陽電池セルの量産性を高めやすい。フラウンホーファー研究所は、シリコン以外の半導体とシリコン半導体の接続コスト低減が、工業規模では必要不可欠になると指摘している。今回の成果は変換効率の高さと、シリコンを用いた多接合太陽電池をモノリシックデバイスとして完成させた初の成果であることだ。
同研究所の次の目標は、今回の方式を採用した太陽電池セルを組み合わせて、太陽電池モジュールとして完成させることだ。こうなれば、屋根の上などに設置可能になる。ドイツのフライブルク市に建設中の研究施設「Center for High Efficiency Solar Cells」で、研究を進めるとした。
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