何もしなくても石炭火力が0になるのなら、なぜ政策が必要なのか。理由は3つ、市場に明確なシグナルを送り、投資の不確実性を下げること、廃止までに必要なコストを引き下げつつ、発電量を確保(セキュリティ)することだ。
そこで、2つの政策を提示した。第1は2025年9月末をもって全廃するというもの。第2は、2023年から2025年まで石炭火力の発電量の40%相当を抑制するというもの。その後全廃する。二酸化炭素排出量を抑えつつ、スムースな電力源の移行を狙う。
将来の電力市場がハイコールシナリオに従って推移した場合、2つの政策によって生じるコストの計算結果がある(図3)。この図には投資家に影響する不確実性と、英国のリーダーシップについて、コスト換算していない。
図3によれば、2025年にいきなり全廃する政策(オプション1)では、炭素排出コストが5億ポンド余分にかかるものの、発電コストは7億ポンド浮く。さまざまなコストを足し合わせると、いきなり全廃する場合は4000万ポンドのコストを要する。2023年から段階的に廃止するオプション2政策を実行すると、3億2000万ポンドのコストが必要な計算だ。
セキュリティについてはどうだろうか。セントラルシナリオに従って市場が推移した場合、どちらの政策を実行したとしても、セキュリティの問題はないとした。
確率は低いものの、ハイコールシナリオが実現した場合、2種類の政策のどちらを採用するかによって、セキュリティに与える影響が異なってくるという。約6GW分を低炭素火力発電によって単純に置き換えるだけではすまないのだ。
図4の上段(Coal plant retirements)は、石炭火力発電の廃止容量を示す。2025年以前にも老朽化した石炭火力発電所などが順次、廃止されていき、2025年に5.9GW分を全廃する。現在から合計して11.5GWの石炭火力発電を廃止する計算だ。
政策オプション1では新規の低炭素火力発電所が16.2GW分立ち上がる。オプション2では10.5GWだ。オプション1では電力のセキュリティを確保するために、5GW分以上の発電所を余分に建設する形になる。
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