クリーンエネルギー分野の技術開発を対象に、世界の有力な投資家が集まって10億ドル超のファンドを創設した。電力・交通・農業・製造業・建築物が排出する温室効果ガスを抑制するための技術開発に投資する。世界20カ国以上の政府とも連携して今後5年間に各国の投資額を倍増させる計画だ。
米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が12月12日に自身のブログで、エネルギー分野の技術革新に向けて10億ドル(約1100億円)を超えるファンドの創設を発表した。ゲイツ氏のほかにソフトバンクグループ創業者の孫正義氏を含む世界の有力な投資家が2015年に結成した「Breakthrough Energy Coalition」がファンドを運営する。ファンドの名称は「Breakthrough Energy Ventures(BEV)」である。
BEVは世界のエネルギー需要の増大に伴って排出する温室効果ガスの抑制をビジョンに掲げる。世界各地の研究機関で進められているクリーンエネルギー分野の技術開発を早期に実用化することが目的だ。電力・交通・農業・製造業・建築物の5つの領域にわたって温室効果ガスの低減を推進していく(図1)。
5つの領域のうち電力の分野では12種類の技術革新を重点テーマに設定した(図2)。CO2(二酸化炭素)を排出しない電力源として、核分裂による原子力発電を筆頭に挙げている。放射能漏れのリスクが低い次世代の発電技術を開発して、コストの低減と建設期間の短縮、さらに廃棄物の縮小を目指す。同じ原子力の技術でも核分裂と比べて安全性が高い核融合も対象に加えた。
このほかに地熱・風力・太陽光・海洋エネルギーによる発電コストを飛躍的に低減する技術開発や、蓄電池・蓄熱装置の低コスト化、柔軟性の高い送電ネットワーク管理、CO2の回収・貯留・利用を促進する技術開発を投資対象に設定した。
投資先を決定するにあたっては4つの基準で判断する。地球温暖化の抑制、他の投資家の関心、科学的な実現可能性、ファンドに対する適合性だ。特に地球温暖化の抑制に関しては、最低でも5億トンの温室効果ガスを削減できる可能性があることを条件に投資していく。各プロジェクトの投資期間は20年を想定している。
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