全世帯の「50%」を風力発電で、ベルギーの挑戦自然エネルギー(1/4 ページ)

原子力と天然ガスに頼るベルギー。旺盛な電力需要をまかないながら、再生可能エネルギーへの急速な転換を進めている。三菱グループはベルギー最大の洋上風力発電所の建設に参加、40万戸の電力需要をまかなう。

» 2016年12月22日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 欧州には風力発電の大量導入を進める国々が目立つ。総発電量に占める割合が高いのは順にデンマーク(約4割)やポルトガル、スペイン、アイルランド、ドイツ(約1割)だ。

 ここにベルギーが加わる。同国の風力発電は急速に成長しているからだ。ベルギーAssociation pour la Promotin des Énergies Renouvelables(APERe)によれば、2015年には全世帯の消費電力のうち、34%に相当する電力を風力発電でまかなったほどだ(総消費電力の7.4%)。既に182基の洋上風力発電機が運転を開始しており、年間2475テラワット時(TWh)の電力を生み出した。

 ベルギー連邦政府は欧州連合(EU)が掲げる中期成長戦略「EU 2020」に基づき、2020年の電力目標を定めている。全世帯の50%の消費電力(総消費電力の13%)をまかなうことが目的だ。陸上風力で3000メガワット(MW、300万kW)、洋上風力で2271MWをまかなう。

ベルギー最大の洋上風力発電所

 この計画を後押しするのがNorther(ノーザー)洋上風力所(出力370MW)。ベルギー最大の新規洋上風力となる。

 発電所の開発、建設、運転を担うベルギーNortherと三菱商事は2014年12月14日、出資に関する合意に達し、契約に署名したと発表。2018年の建設開始に向かって、機器の製造フェーズに入る*1)

 三菱重工業とデンマークVestas Wind Systemsの合弁会社であるMHI Vestas Offshore Windが出力8.4MWの新型機「V164-8.0MW」44基を納入する(図1)*2)。風力発電機としては最大出力の製品だ(関連記事)。ブレードの先端は海面から約187mの高さに達する。

*1) 海底ケーブルはオランダVan Oordが、系統接続はベルギーElia System Operatorが担当する。
*2) V164-8.0MWは最新型の装置だ。三菱重工業は2016年9月、Northerに先立ち11基を初受注したと発表している(納入先は英国)。パワーモードで運転することにより定格出力8.0MWを超える8.4MWで運転が可能。

図1 導入する風力発電機の外観 出典:三菱商事

 総事業費は12億ユーロ(約1500億円)にものぼり、3社が共同で事業会社に出資する*3)。3社とは三菱商事(25%出資)とオランダEneco(25%出資)*4)、ベルギー内陸部のリエージュ州が100%出資するベルギーNethys(50%出資)。

*3) 複数の金融機関が8億6700万ユーロを融資し、残りは株主持ち分でまかなう。3社はそれぞれの子会社を通じて出資した。三菱商事は100%子会社の英Diamond Generating Europe、EnecoはオランダEneco Wind Belgium、NethysはベルギーElicioである。
*4) 三菱商事によれば、2012年にEnecoとの間に締結した長期的な戦略提携に基づいて参画する2番目の案件だ。1番目の案件はオランダ・ルフグタウネン洋上風力発電所(約130MW、折半出資)。

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