全世帯の「50%」を風力発電で、ベルギーの挑戦:自然エネルギー(4/4 ページ)
面積3600km2のベルギーEEZは、ほぼ台形をなしている。ただし、使いにくい。なぜならすぐ西側には英仏間のドーバー海峡が位置しており、海上輸送のあい路となっているからだ。風力発電に利用できる部分は156km2と少ない。
ベルギーの計画ではEEZのうち、最も南東側、オランダの水域に隣接した部分を洋上風力発電所に用いる。陸上への送電(連系)も想定しながら、計画的に水域を埋めてきた。1つのプロジェクトで数十の風力発電機を配置、プロジェクトごとに陸上と連系し、発電量を増やしてきた。水域とプロジェクトの名称、連系方法を図6に示す。
図6 ベルギーの水域とプロジェクトの配置 系統との連系について示した(クリックで拡大) 出典:ベルギーの送電事業者(TSO)であるElia System Operatorが公開した図版を本誌が編集
図7に洋上風力発電プロジェクトの一覧を示す。既に3つのプロジェクト「C-Power、Northwind、Belwind」が運転を開始している。
今回のNortherプロジェクトはC-Powerプロジェクトから開けた海面を隔てて1km南東側に広がる。2008年に認可を取得してからようやく実行フェーズにこぎ着けた形だ。完成後は、ベルギーの約40万世帯の需要に相当する電力を供給できるという。
図7 ベルギーの洋上風力発電プロジェクトの一覧 出典:IEAの公開データとNortherの公開データから本誌が作成
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