2017年4月に始まる都市ガスの小売全面自由化で、電気料金と合わせた値引き競争が激しさを増していく。家庭向けに都市ガスを販売できなかった電力会社がLNGの調達力を武器に攻めに転じる。電力と違って都市ガスの供給・保安体制を1社で整備することはむずかしく、新たな提携関係が拡大する。
日本のエネルギー産業は2017年も激動の1年になることは間違いない。電力に続いて都市ガスの小売全面自由化が4月に始まり、電力+都市ガスのセット販売による顧客獲得競争が加速していく(図1)。ただし300社以上が参入した電力の小売と違って、都市ガスの小売は大手の電力会社とガス会社を中心に少数精鋭の競争になる。
新たにガス小売事業者に登録した会社は2016年末の時点で9社にとどまっている。このうち家庭向けに都市ガスの販売を予定しているのは、関西電力を筆頭に東京電力エナジーパートナー(東京電力EP)、中部電力、九州電力の4社である(図2)。今後は他の地域の電力会社もガス小売事業者に登録する見込みだ。
すでに東京電力EPと関西電力は都市ガスの販売拡大に向けて体制整備に着手した。東京電力グループの小売事業会社である東京電力EPは、関東一円で都市ガスとLP(液化石油)ガスを販売するニチガス(日本瓦斯)と共同で都市ガスの顧客を拡大する計画を打ち出している(図3)。
東京電力グループが火力発電用の燃料を供給するために東京湾岸に展開している4カ所のLNG(液化天然ガス)基地から家庭用の都市ガスも供給する計画だ(図4)。東京電力のLNG輸入量は国内最大で、東京ガスの2倍もある。このLNG調達力を生かして、ニチガスのグループ会社を含めて2017年度に50万件、3年後の2019年度には100万件まで都市ガスの顧客を増やしていく。
対抗する東京ガスは2016年末の時点で1000万件強の家庭を顧客に抱えている。2016年4月から都市ガスとセットで電力の小売に乗り出し、わずか7カ月で50万件を超える電力の契約を獲得した。2017年度末には100万件の獲得を目指している。
これまでに2回の料金改定を実施して、東京電力の標準メニューよりも安さが明確にわかるプランを用意したことが功を奏した。標準的な家庭の場合に、電力と都市ガスのセット料金で年間に8500円も割安になる(図5)。
当然ながら東京電力EPも電力と都市ガスのセット割引を実施する計画だ。東京ガスに対して割引率で対抗する以外に、他の商品やサービスと組み合わせてメリットを訴求する方法が考えられる。すでにソフトバンクと組んで電力と携帯電話のセット販売で多数の契約を獲得していることから、セット契約に都市ガスをオプションで追加する戦略も効果的だろう。
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