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» 2017年01月06日 07時00分 公開

2017年のエネルギートレンド(2):電力会社とガス会社の競争さらに激しく、料金の値下げが加速 (2/3)

[石田雅也,スマートジャパン]

ガスの託送料金は電力よりも高め

 東京と同様に関西でも顧客獲得競争が激しくなっていく。関西電力はガス小売事業者の登録申請が始まった2016年8月1日に第1号の申請を出して意気込みを示した。その直後には5社と提携して都市ガスの販売・保安を展開することも表明した。提携先の1社は家庭用のカセットコンロや産業用のガスを販売する岩谷産業だ。共同で新会社の「関電ガスサポート」を設立して顧客の開拓に取り組んでいく(図6)。

図6 関西電力と岩谷産業の都市ガス販売・保安体制。LPG:液化石油ガス。出典:関西電力

 関西電力は火力発電用に大阪湾岸に2カ所のLNG基地を運営して、LNGの年間輸入量では大阪ガスを上回る。都市ガスの小売全面自由化で大阪ガスの導管を使って家庭向けにも供給できるようになるが、それに伴って家庭内のガス機器の保安に責任を負わなくてはならない(図7)。この点でもガス機器の販売で実績が豊富な岩谷産業と提携する意義は大きい。

図7 ガス小売全面自由化後の供給・保安体制。出典:関西電力

 電力会社が狙うのは、新たに自由化の対象になる小口の都市ガス利用者だ。家庭を中心に全国で2900万件を超える小口のガス利用者が存在する(図8)。市場規模は2.4兆円にのぼり、家庭向けの電力市場7.5兆円と比べて3分の1の規模がある。

図8 都市ガスの小売自由化の対象。出典:東京電力、中部電力、関西電力

 ただし市場の構造は電力と大きく違う。これまで各地域で家庭向けに都市ガスを販売してきた「一般ガス事業者」は全国で200社を超える。その中には地方自治体も含まれている。ところが全体の販売量のうち65%を東京ガス・大阪ガス・東邦ガス(中部圏)の大手3社が占める寡占状態だ(図9)。都市ガスを供給する導管のシェアも3社で50%以上になる。

図9 都市ガスの市場構造。出典:資源エネルギー庁

 2017年4月からガス小売全面自由化に伴って事業者の区分が変わるのと同時に、導管を保有・運営するガス事業者は国から託送料金の認可を受ける必要がある(図10)。電力の送配電ネットワークと同様に、他の小売事業者が託送料金を支払って導管を利用できるようにするためだ。託送料金の水準によって小売事業者のガス料金が決まる。

図10 ガスの小売全面自由化に伴う事業者の区分変更。出典:資源エネルギー庁

 特に導管のシェアが高い大手3社の託送料金が都市ガス市場の競争を大きく左右する。3社が2016年7月に国に認可を申請した時点の託送料金は、標準家庭の小売料金に対して40%を超えている(図11)。大阪ガスの託送料金の比率は50.9%にもなる。都市ガスの需給調整にかかるコストを3社の中で最も高く想定していることが理由の1つだ。

図11 大手ガス3社の家庭向け託送料金・小売料金(認可申請時点)。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 電力の場合も家庭向けの託送料金の比率は40%を超える地域が多い。都市ガスの託送料金が特別に高い水準にあるとは言えないが、各社は国から値下げの指示を受けて修正した(図12)。東京ガスの託送料金の比率は46.0%から44.5%に、大阪ガスは50.9%から50.3%に、東邦ガスは42.9%から40.2%に下がった。

図12 東京ガスの託送料金(2017年4月1日から)。出典:東京ガス

 大阪ガスの託送料金の比率は50%を超えたままで、新規参入の事業者にはガス料金を安く設定できる余地はさほど大きくない。それでも先陣を切る関西電力は大阪ガスに対抗して、電力+都市ガスのセットで関西電力と大阪ガスの通常の料金から8%割り引くプランを発表した(図13)。年間で5500円も安くなる。

図13 「関電ガス」のセット割引(2017年4月1日から)。出典:関西電力

 同様に東京電力や中部電力も2017年3月までに家庭向けの電力+都市ガスのセット割引料金を発表して営業活動を開始する見通しだ。大手ガス3社は今度は既存の顧客を死守する立場に変わる。電力会社のセット割引料金を見たうえで、改めて安いプランを投入してくることは間違いない。

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