米国の事例の背景はインドと多少似ている。米国西岸部には電力の需要に季節変化があり、通常は北部の電力を南部に送電している。しかし冬季は南部の需要が減り、北部は暖房による電力需要増が見られる。
ABBは半世紀前の1965年にロサンゼルス水道・電力局(LADWP)から全長1360kmの「パシフィックインタータイHVDCプロジェクト」を受注、北米最古の大規模なHVDCプロジェクトだ(図3)。ABBは設備完成後、現在まで複数回にわたって設備を更新、容量を拡大してきた。
2016年にはオレゴン州のコロンビア川流域に位置する同プロジェクトの北端、セライロ変換所(交流−直流変換)の容量を380万kWまで増強。今回、ロサンゼルスに位置する南端のシルマー変換所の更新について、LADWPから1億ドルの案件を受注した(図4)。
システム電圧は500kV、容量は322万kW。2020年に完成を予定する。
同プロジェクトの特徴は、送電線の「デジタル化」を進めること。デジタル化といっても送電電力自体をデジタル化するのではない。変換所のハードウェアを監視・制御・保護する設備をデジタル化して効率と信頼性を高める。同社はデジタルMACH制御*4)と保護システムの他、交流直流変換フィルタやシャントリアクトル、計測機器、周辺機器を更新するという。
*4) ABBは既に全世界1100以上の設備にデジタルMACH制御を導入済みだという。
ブラジルは再生可能エネルギーの導入量が多い国。水力発電の規模、発電量とも中国に次いで世界第2位にある。問題は北部に多い大規模な水力発電所と、南部の電力需要地があまりにも離れていることだ。
この問題を解決するのが、ベロモンテプロジェクトだ。アマゾン川の支流シン川(Xingu)に設けた水力発電所(パラ州)からの電力を引き受ける。シン変電所で高圧の直流に変換後、2518kmを送電して南東部のリオ変電所で交流に再変換し、需要地に送り届けている。1000万人の需要を満たすプロジェクトという。
ブラジルにおけるABBの契約はシステム全体(ターンキー)ではなく、80万kVのUHVDC送電線向けの変圧器に限られている。受注金額は7500万ドルだ。
容量40万ボルトアンペア(400MVA)のコンバータ変換器14台と周辺機器を納入することで、電力系統の安定性と電力の信頼性を向上でき、送電損失も最小化できるという。
ABBは2015年、日本国内において、日立製作所と合弁企業である日立ABB HVDCテクノロジーズを設立している(関連記事)。国内でも再生可能エネルギーの大量導入によって、系統電力に負荷がかかる課題がある。HVDC技術に期待したい。
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