徳島県の鳴門市が洋上風力発電の適地を抽出する調査に着手した。渦潮で有名な鳴門海峡の周辺海域を対象に、50MW級の洋上風力発電所を建設できる適地を設定する。漁業や船舶の航行に対する影響などを評価したうえで、適地・不適地を表すゾーニングマップを作成して導入計画に生かす。
鳴門市の沖合は環境省が実施する「風力発電等に係るゾーニング手法検討モデル事業」のモデル地域に選ばれている。5700万平方メートルに及ぶ海域を対象に、50MW(メガワット)程度の洋上風力発電の適地を2018年3月までに抽出する予定だ(図1)。鳴門市に加えて、再生可能エネルギーの導入を推進する徳島地域エネルギー、発電事業者の自然電力と3者で調査を進める。
鳴門市は瀬戸内海と太平洋を結ぶ海上交通の要衝を抱えている。対岸の淡路島とのあいだにある鳴門海峡は渦潮で知られ、潮流が速いうえに年間を通じて強風が吹く(図2)。洋上風力発電に適した場所だが、船舶の航行量が多く、周辺の海域では漁業も盛んだ。50MWに及ぶ大規模な洋上風力発電を展開するにあたっては、漁業や船舶の航行に与える影響のほか、動植物や景観に対する影響も考慮する必要がある。
風力発電の適地を抽出するためにゾーニング手法を採用する。風況を表した地域のマップをもとに、航空路や航路などの安全性の確保、漁業をはじめ社会経済面の影響、景観地や自然保護区の分布を重ね合わせながら、導入の適性を総合的に評価したゾーニングマップを作成していく手法だ(図3)。
これまでに鳴門市は陸上を対象に、環境保全団体のWWFジャパンなどと共同で風力発電のゾーニングマップの作成に取り組んできた実績がある。ゾーニングマップを作成する過程で地域と合意形成を図り、市が策定する再生可能エネルギーの導入計画に反映させる(図4)。新たに洋上風力のゾーニングマップを作成したうえで、導入計画と合わせて風力発電の建設ガイドラインも策定する方針だ。
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