海が生み出す風力と潮流発電、陸上では太陽光から水素も作るエネルギー列島2016年版(42)長崎(2/4 ページ)

» 2017年02月14日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

潮流発電の実証運転を2019年度に

 五島列島は日本でも有数の海洋エネルギーの宝庫である。福江島に隣接する久賀島(ひさかじま)と奈留島(なるしま)のあいだは潮の流れが速いことで知られる。潮流を利用して発電するためには1.5メートル/秒以上の流速が必要だが、2つの島のあいだには最大で3メートル/秒の潮流が発生する。国から海洋エネルギーの実証フィールドに選ばれて、2016年7月に潮流発電の導入プロジェクトが始まった(図6)。

図6 潮流発電の実証フィールド。出典:長崎海洋産業クラスター形成推進協議会

 潮流発電機を設置する場所は久賀島と奈留島のあいだにある「奈留瀬戸」の海底だ。水深は40〜50メートルで深い。設置する潮流発電機は直径が16メートルもある。回転する部分の中央が開いていて、潮流を通しながら回転して発電する仕組みだ(図7)。1分間に10〜16回転する。発電能力は2MWになり、世界で最大級の潮流発電を目指す。

図7 海底に設置する潮流発電機の外観イメージ(上)、実機(下)。出典:九電みらいエナジーほか

 九州電力グループの九電みらいエナジーを中心に、潮流発電機を製造するアイルランドのオープンハイドロ社の日本法人や長崎県の協議会が参画してプロジェクトを推進していく。2017年度から発電機と基礎構造物の製造に入り、2019年度に実証運転を開始する予定だ。

 潮流は潮の満ち引きによって約6時間ごとに向きを反転しながら、ほぼ一定の速さで流れ続ける。風力発電のように天候の影響を受けにくく、安定した電力を供給できる利点がある。潮流発電の設備利用率は最高で40%程度を期待できて、浮体式の洋上風力発電の標準値30%を上回る。

 国内では瀬戸内海に潮流の速い海域が広く分布しているほか、五島列島を含む西九州にも潮流の速い場所が数多くある(図8)。五島列島の奈留瀬戸で進めるプロジェクトを通じて、日本の環境に適した潮流発電の技術を確立する狙いだ。実用化できれば国内の海洋エネルギーの導入量が飛躍的に拡大する。

図8 潮流発電の導入ポテンシャル。m/s:メートル/秒。出典:長崎県産業労働部

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