「米と発電の二毛作」が進化、太陽光パネルの両面発電にも挑む自然エネルギー(1/3 ページ)

佐賀県の山間部にある棚田で2015年に始まった「米と発電の二毛作」が2年目を終える。棚田の上部に58枚の太陽光パネルを設置して、営農型の太陽光発電の効果と影響を検証するプロジェクトだ。2年目はパネルの高さを3メートルに引き上げたほか、裏側にもパネルを付けて両面発電を試した。

» 2017年03月08日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 三瀬村(みつせむら)は佐賀県の北部にある山に囲まれた農村だ。人口は1300人で、2005年に佐賀市の一部になった。稲作と養鶏が盛んな地域だが、平地が少ないことから棚田で米作りに取り組んでいる。農家の収入を太陽光発電で増やす「米と発電の二毛作」がNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証事業として2014年に始まった(図1)。提案者の福永博建築研究所が実証事業を担当する。

図1 「米と発電の二毛作」を実施した棚田。上空写真(左)、実施前(右)。出典:福永博建築研究所

 三瀬村の農家が所有する3枚の棚田のうち2枚の上部に太陽光パネルを設置した。太陽光パネルは1枚あたりの発電能力が250W(ワット)で、合計58枚を3列ずつに並べて配置する構成だ(図2)。農地を一時転用して営農型の太陽光発電を実施する「ソーラーシェアリング」は九州で初めての試みである。

図2 太陽光パネルの配置。出典:福永博建築研究所

 最大の特徴は太陽光パネルを設置するワイヤー式の架台にある。棚田の中に高さ4メートルのA型のフレームを支柱として立てて、支柱のあいだをワイヤーでつないで太陽光パネルの架台を造る(図3)。南北の方向に設置した支柱とワイヤーの上に太陽光パネルを装着する仕組みだ。ワイヤーがたるむことによって、パネルの角度は北向きか南向きに0度から20度まで傾く。

図3 太陽光パネルを設置するワイヤー式架台。1年目の2015年(上)、2年目の2016年(下)。GL:グランドレベル(地面)。出典:福永博建築研究所

 棚田で二毛作に取り組んだ1年目の2015年にはワイヤーの高さを2メートルに下げて風の影響を抑えたが、2年目の2016年は3メートルに引き上げて農作業を進めやすくした。さらにワイヤーを支える折りたたみ式の脚を閉じた状態にして、代わりに振れ留め用の補助ワイヤーを追加して耐風性を高めている。

 太陽光パネルは左右の間隔が4メートル、前後の間隔が1メートルになるように配置した(図4)。稲の成長には穂が出る前の状態で1日あたり5時間の日照、穂が出てからは9時間の日照が必要になる。太陽光パネルの下に影ができても、1本1本の稲に対して十分な日照時間を確保できるように計算してパネルの間隔を決めた。

図4 ワイヤー式架台の外観(上)、振れ留めワイヤーによる耐風性の増強(下)。出典:福永博建築研究所
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