「米と発電の二毛作」が進化、太陽光パネルの両面発電にも挑む自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2017年03月08日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

収穫量は80%以上、発電効率は年間12%

 三瀬村では棚田の農作業を毎年4月に始める。農機を使って田んぼを耕すために、補強用の振れ留めワイヤーを外して農機を移動しやすくした(図5)。5月の田植えも同様に振れ留めワイヤーを外した状態にすれば、太陽光パネルの位置はそのままで農機を田んぼに入れて作業できる。

図5 農機を使った田植え前の荒がき(上)と田植えの様子(下)。出典:福永博建築研究所

 1年目は農機を使う時に、支柱に付いているチェーンを使って手動でワイヤーを上げ下げして太陽光パネルの位置を変える必要があった。2年目は力のいるワイヤーの上げ下げを省くことができて農家の負担が軽くなった。ただし架台の周囲だけは農機を使えないため、手で苗を植えなくてはならない(図6)。この手作業は1年目も同様だ。

図6 架台の周囲の一部を手植え。出典:福永博建築研究所

 稲は太陽光パネルの下で、2年続けて問題なく成長した(図7)。穂が実って刈り取り作業を実施するのは10月中旬である。太陽光パネルによって影ができる区画と影ができない区画で1株あたりの収穫量を比較した結果、影ができる区画では1年目に平均90%、2年目は82%だった。

図7 稲の生育状況。出典:福永博建築研究所

 実証事業を担当した福永博建築研究所の草野寿康氏によると、「2年目は田植えが1週間ほど遅れた。稲の穂が分かれるまでの期間が短く、影ができる区画では穂の数が増えなかったことが原因ではないか」と推測する。収穫量の比較にあたっては、1メートル×2メートルの区画から40株を採取して複数の区画の平均値を出した(図8)。日照時間のほかに、施肥など農作業との関連についても引き続き検証する。

図8 収穫量を比較するための坪刈りの様子。出典:福永博建築研究所

 一方で年間の発電量は当初の想定を上回った。太陽光パネル58枚で全体の発電能力は14.45kW(キロワット)である。年間の発電量を1000倍の1万4550kWh(キロワット時)と推定した。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)では11.4%になる。2015年10月から2016年9月の実績では年間の発電量が1万5256kWhに達した(図9)。設備利用率は12.0%で、太陽光発電の標準的な水準と同等だ。

図9 月ごとの発電量。出典:福永博建築研究所

 三瀬村では冬に雪が降ることも多く、12月から2月にかけては日照時間の短さと相まって発電量が大幅に落ちてしまう(図10)。その代わりに高原にあるため夏の日中でも気温がさほど上がらず、太陽光パネルの発電効率が低下しない。1日あたりの発電量は8月が最高だった。

図10 太陽光パネルに雪が積もった状態。出典:福永博建築研究所

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