発送電分離で激変する電力事業の“経営”、求められる視点とは電力供給サービス(1/2 ページ)

2020年4月の発送電分離により、競争の激化が予想される電力市場。NECは米国のサクラメント電力公社、SpaceTime Insightと共同で、電力事業者向けの経営支援ソリューションの提供を開始した。3社のノウハウを組み合わせ、発電・送配電・小売の各事業者に対し、“発送電分離以後”に求められる経営を支援するという。

» 2017年08月08日 07時30分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 電力システム改革の第3段階として、2020年4月に迫る発送電分離。市場の活性化を促すために電力会社の送配電部門を独立させて中立化を図るという、日本の電力業界において重要なターニングポイントになる制度改革だ。同時に電力会社(一般電気事業者)は、発電・送配電・小売の部門ごとに、独立した事業拡大と競争力を求められるようになる。

 NECは2017年8月6日、こうした発送電分離後の電力市場を見据え、米国カリフォルニア州に本拠を置くサクラメント電力公社(SMUD)、SpaceTime Insightと共同で、電力事業者向けのエネルギーソリューションサービスの提供を開始した。

 NECの持つ電力事業者向けITシステムの導入実績や各種技術、米国で再生可能エネルギーの導入や需要家向けサービスの展開など、発電から小売までの一貫した電力事業で実績を持つサクラメント電力公社の経営ノウハウ、SpaceTime Insightの可視化・分析技術を組み合わせる。発電事業者、送配電事業者、小売電気事業者、需要家など、今後の電力市場におけるさまざまな立場の事業者別に、経営および競争力の強化を支援するサービスを展開していく計画だ。

左からNEC スマートエネルギー事業部長 井島功晴氏、NEC 執行役員常務 社会基盤ビジネスユニット長 高田和宏氏、サクラメント電力公社 CEO and General Manager Arlen Orchard氏、SpaceTime Insight CEO Rob Schilling氏(クリックで拡大)

 電力事業者向けサービスの開発を目的とした3社の協業は、2015年からスタートしている。サクラメント電力公社はカリフォルニア州サクラメント市が運営する、米国でも最大級の自治体系電力会社だ。発電から送配電、小売までを一貫して手掛けており、現在約61万世帯、約140万人の顧客基盤を持つ。

 カリフォルニア州は米国の中でも、特に意欲的な環境政策を推進している州だ。再生可能エネルギーの導入ついては、「Renewables Portfolio Standard(RPS)」という電力供給事業者に対し、州内で販売する電力における再生可能エネルギーの割合を一定以上に高めることを義務付ける施策を進めている。目標は2020年までに33%、2030年までに50%である。

 サクラメント電力公社は自社所有の太陽光発電所や風力発電の建設などを進め、州内でいち早く再生可能エネルギー比率20%を達成。さらにこうした再生可能エネルギーの導入に合わせた新しい料金プランの策定など、顧客向けサービスの拡充にも積極的に取り組んでいる。つまり、分散型電源に移行しつつある市場において、発電から送配電、小売までの一貫した電力事業のノウハウを持つ。

サクラメント電力公社の概要(クリックで拡大) 出典:NEC

 NEC スマートエネルギー事業部 事業部長の井島功晴氏は、サクラメント電力公社との協業の意義について「日本ではこれまで全ての電力事業が1つの電力会社の中で行われる仕組みだったが、発送電分離によって、発電・送配電・小売に分かれることになる。つまり、それぞれの事業体別に“外から見える経営”を行わなくてはならない。サクラメント電力公社は、さまざまな新しい試みを成功させているイノベーションリーダーであると同時に、自治体系の電力事業者という常に透明な経営を求められる企業として、顧客への説明責任をしっかりと果たしている。こうした経営手法やさまざまなノウハウは、日本の電力事業者にとっても有効なのではないか」と語る。

 協業先のもう1社であるSpaceTime Insightは、設備集約型の業界に向けに、機械学習を利用したデータ分析技術を提供している。設備の稼働状況の管理や、再生可能エネルギーの発電予測などが行え、これまでに北米のユーティリティ企業や鉄道会社など、約30社以上への導入実績があるという。

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