北海道初の農業水路で小水力発電、売電収益で農業を守る自然エネルギー(1/2 ページ)

北海道の土地改良区で、道内初となる農業用水路を利用した小水力発電所が完成した。冬期はほとんど農業用水を使用しないため、施設の稼働期間が限定されてしまうという北海道特有の問題を、水利権の確保の工夫でクリアした。売電収益を改良区内の施設の維持管理費に充てることで、農家の負担軽減にもつながる。

» 2017年08月08日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 北海道旭川市および上川郡当麻町に位置する「当麻永山用水地区」に、農業用水路を活用した小水力発電所「当永発電所」が完成した。北海道開発局の旭川開発建設部が国営かんがい排水事業のもとで建設した発電所で、旭川市内と土地改良区が北海道電力に売電を行い、その収益を用水路の維持管理費に充てる計画だ。農業用水路を活用した小水力発電所は、道内で初の事例になるという。

 当麻永山用水地区は国営かんがい排水事業に基づく改良区だ。水稲、大豆、そば、野菜、トマト、スイカなどの生産が定着している。一方で農業水利施設の多くは、建設以来30年以上を経過しているものが多く、さらに凍害などによって老化が進行。漏水や分水位の低下などで安定した用水供給が困難になることを防ぐための改修費が増大していた。

 さらに、電気料金の上昇などもあり、同地区における施設の適正な管理は難しい状況にあった。そこで既存の農業用水路を活用した小水力発電所を建設し、売電収益を活用して維持管理費の低減を図ろうという狙いだ。

当麻永山用水地区の概要(クリックで拡大)

 旭川建設部によると、2016年5月時点までに全国65地区で農業用水路を利用した小水力発電が行われている。一方、北海道内には多くの農業水利施設があるものの、小水力発電の導入が進んでいない。冬期はほとんど農業用水を使用しないため、施設の稼働期間が限定されているためだ。稼働期間が短いと年間発電量が見込めないため、事業採算が採りにくい。

 そこで今回は、かんがい期間の前後に新たに発電用水利権を確保することにした。通常の水田かんがい期間(5〜8月)に加え、4月および9〜11月の非かんがい期間の発電用水利権を取得した結果、年間を通じて十分な発電量を得られるめどが立った。1年のうち約8カ月間稼働する計画だ。

発電を行う期間のイメージ。赤枠の部分が新たに水利権を確保したところ(クリックで拡大) 出典:旭川建設部
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