矢野経済研究所は国内の再生可能エネルギー向けパワコン市場の調査結果を発表。太陽光発電向け需要の落ち込みが響き、市場は減少基調に転じたとしている。
国内の再生可能エネルギー用パワーコンディショナー(PCS)市場が縮小へと転じている。これまで拡大をけん引してきた産業向け太陽光発電システム需要の減少が最も大きな要因で、将来的にも落ち込みに歯止めがかからず、2020年度には半減するとの見込みだ。
矢野経済研究所はこのほど、国内の太陽光発電や風力発電、燃料電池、蓄電池向けなど再生可能エネルギー用PCS(住宅用および産業用)の市場調査を実施した。その結果によると2016年度のPCS市場規模(メーカー出荷金額ベース)は前年度比28.3%減の1284億6500万円と前年度実績を大きく下回る結果となった。市場規模は縮小へと転じているが、2017年度の市場規模は同0.8%減の1273億9000万円と微減にとどまると予想している。
2016年度のPCS市場は、出荷数量の減少に加え低価格化が進行したことにより、10kW(キロワット)未満帯、10〜100kW未満帯、100kW以上帯のいずれの出力帯でもマイナス成長となった。2012年の「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」開始以後、太陽光発電システムの普及で拡大してきたPCS市場は、減少基調に転じた。特に高圧や特別高圧の太陽光発電システム向けとなる100kW以上帯の大型PCSは、メガソーラーの需要が減るとともに、FIT価格の低下による低価格化ニーズが強まることで、10〜100kW未満帯の中型PCSによる多数台連系に代替する動きが進む見通しだ。それに伴い海外PCSメーカーの営業展開が活発化しているという。生産規模で勝る海外メーカーは価格競争力が高く、国内PCSメーカーは苦戦を強いられる状況となっているようだ。
今後の見通しについては、産業向け太陽光発電システムの需要が先細り、2018年度以降も減少傾向になる見込みだとする。住宅用途のPCSは2019年度頃からFITの10年間にわたる固定価格買い取り期間の終了による代替需要が期待できるものの、住宅用途のみでは市場全体の縮小をカバーするには至らないと予測。その結果、2020年度の市場規模は2016年度の約半分となる630億円に減少すると予測している。
こうした状況により、国内PCSメーカーは、FIT向けに代わる新規需要を開拓する必要に迫られる見込みだ。その結果、産業向けの自家消費用の需要開拓に向けた動きや、蓄電池用の製品の市場投入が多くなると予測している。また、太陽光発電以外で再生可能エネルギー発電用途のPCSに関する提案も増えてくるとみられる。住宅用途でも、PCS単体での提案から、「HEMS(Home Energy Management System)」との融合が進み、「V2H(Vehicle to Home)」や「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」と組み合わせた提案が進むとする。このように国内PCSメーカーは信頼性を生かしたシステムでの提案が増えていく見込みだ。
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