世界の空調・給湯器市場、日系メーカーの存在感が高まる省エネ機器(1/2 ページ)

世界の空調・給湯機器市場は今後も堅調に拡大しそうだ。空調機器では特に、日系メーカーが高いシェアを誇るビル用マルチエアコンが高い伸びを示すことが予想されている。給湯機器では電気温水器などの従来品からエコキュートをはじめとするCO2冷媒製品への移行が進みそうだ。

» 2017年08月16日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 富士経済は2017年6月、冷媒規制が一段と強化されることにより新たな対応が必要となるヒートポンプ機器を中心に、空調・給湯機器の市場を調査し、結果を報告書「ヒートポンプ 温水・空調市場の現状と将来展望 2017」にまとめた。

 それによると、2016年の空調機器市場は7兆2627億円となった。ルームエアコン(RAC)、パッケージエアコン(PAC)/ビル用マルチエアコン(VRF)がけん引しており、中国は需要の伸びが鈍化しつつあるものの、インドや東南アジアなど新興国の旺盛な需要が続き、2025年には2016年比21.9%増の8兆8552億円に拡大すると予測している。

空調・給湯機器関連世界市場の推移(クリックで拡大) 出典:富士経済

 また、2016年の給湯機器市場は1兆6234億円となった。住宅向け給湯機器が燃焼式では貯湯式から瞬間式へ、電気式では電気温水器からヒートポンプ式給湯機へ移行しており、熱源を問わず高効率機器への需要が高まっている。住宅向け、業務・産業向けを問わず、需要の中心となる中国で中流層以上の需要を獲得していることや、欧州で省エネ機器導入推進の政策が行われていることもあり、ヒートポンプ機器の伸びが期待される。

 この他、冷凍・冷蔵機器、輸送関連を加えた全体市場は2016年13兆4031億円となり、2025年には2016年比18.7%増の15兆9147億円に達するとの予測だ。

 国内では、東京五輪に向けた都市開発などによる新築需要に加え、セントラル空調から個別空調のVRFへの切り替え需要もあり、需要は成熟しながらも2020年までは微増が予想される。これまでセントラル空調とVRFのすみ分けは、延床面積1万平方メートル程度であったが、3万平方メートルでもVRFを採用するケースが出てきており、VRFの対応面積が広がっているとする。

 海外では、中国、東南アジアでオフィスビルや店舗、ホテルといった本来の需要に加え、富裕層住宅向け空調として小型VRFが効率の高さから採用され、需要が伸びている。また、更新需要が中心となる欧州でも温暖化への影響という観点からセントラル空調からVRFへの切り替えがみられており、2025年には2016年比29.3%増の9082億円が予測される。なお、セントラル空調とVRFのすみ分けは延床面積3000〜5000平方程度であり、日本と比較するとセントラル空調が優位にある。

 エコキュートをはじめとするCO2冷媒製品に加え、非CO2冷媒製品、ガスとヒートポンプのハイブリッド給湯機などの住宅向けヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプ式ではない電気温水器(2016年世界市場:4260億円)、ガスや石油を熱源とする住宅向け燃焼式給湯器(2016年世界市場:6234億円)などと競合している。国内では、東日本大震災以降エコキュートの市場の縮小が続いていたが、2015年を底に復調している。また、更新需要の本格化や、電力の小売全面自由化を契機とした一部電力会社による電化提案の再開などから今後も拡大が続き、2025年の市場規模は2016年比12.2%増の1840億円と予測している。

 海外では政策による支援がある中国と欧州が市場をけん引しており、今後も拡大が予想される。欧州の中では、電気料金の安いフランスの需要が多い。もとより電気温水器が普及しており、高効率のヒートポンプ式給湯機への移行が進んでいる。

 日本ではエコキュートが主流である一方、海外では非CO2冷媒製品が主流で、採用される冷媒はR410A、R134a、R22が中心となる。この他、日本では風呂文化が根付いているため容量は6kW(キロワット)、海外はシャワーが中心のため3kWが主流といった違いがみられる。

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