電源開発とNICTは電波の届かない山岳部などの電力設備の点検に、ドローンを適用できるシステムの開発に着手する。2019年度の導入を目指す方針だ。
電源開発(Jパワー)と情報通信研究機構(NICT)は、ドローンを活用した電力設備点検向け無線伝送システムの共同研究の実施に向け、このほど契約を締結したと発表した。電波の届かない山岳地帯などでも、ドローンを利用して電力設備を効率よく点検できるシステムの開発を目指す。
Jパワーは、以前からドローンを活用して電力設備点検の効率化を目指すための研究開発を実施している。しかし、山間部などでは山や樹木に遮蔽されて電波が届かず、携帯電話も圏外となる場所が多くあるため、ドローンの運用範囲には限界があった。
一方、NICTは、内閣府が進める「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」の一環である「タフ・ロボティクス・チャレンジ」の中で、直接電波見通し外のドローン運航を可能とする、マルチホップ中継制御通信システム「タフ・ワイヤレス」の開発を進めてきた。この技術は、通信料金がかからず低コストで比較的長距離の通信が可能な920MHz帯を用い、最大2台までの地上設置あるいは別のドローンに搭載された中継局を介し、バケツリレーのように通信信号をつないでドローンを制御(コマンド送信)するとともに、その状態監視(位置、高度や姿勢等のテレメトリ受信)を可能にする。
タフ・ワイヤレスの大きな特徴が、操縦者側でコマンドを送信してからドローンに到達するまでの遅延時間が0.06秒程度と短いことだ。また、ドローンの移動により途中の中継経路が切り替わったとしても、通信信号が途中で切れることがなく、連続して制御と状態監視が行える。そのため、ドローンの操縦者の目視外かつ電波が直接届かない環境でも、別のドローンを無線中継用として飛行させ、見通し外のドローンとの間の通信を確保することで、安全な運航が可能になるとしている。
今回の研究は、NICTが開発する直接電波見通し外で安全にドローンを運航するための無線伝送技術を、Jパワーが開発する電力設備点検用ドローンに適用し、山間部における点検作業の大幅な効率化を図るための検証・評価を行う。
共同研究では、ドローンを見通し外で運航する際の無線中継方法、飛行ルートの選定、運航条件・運航制約の検討並びにドローンの運用方法、さらには操縦者側からドローンに無線で送られる制御命令データと、ドローンから操縦者側に無線で送られてくるその位置や高度、飛行状態等のデータなどの通信品質及び電力設備点検への有効性の検証・評価を行い、2019年度の導入を目指す。
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