行動経済学の知見は、日本の省エネの切り札となるかエネルギー管理(1/2 ページ)

行動経済学の知見を活用して、家庭部門の省エネを目指すーー。日本でこうした実証プロジェクトがスタートした。生活者を「そっと後押し」して省エネ行動を促すという、その実証の内容とは?

» 2017年11月27日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 行動経済学の知見を利用して、生活者に省エネ行動を促し、家庭部門のCO2排出量削減を目指す――。こうした試みが日本でスタートしている。日本オラクルと住環境計画研究所は2017年11月、行動経済学を応用し、生活者に自発的な省エネ行動を促す実証実験を2017年度から5年間にわたって実施すると発表。環境省の委託事業に採択されたもので、家庭部門の有効な省エネ施策となるか、その成果に注目が集まる。

2017年11月13日に開かれた会見の様子

 家庭部門の省エネというと、エネルギー効率を高める住宅や建材、機器、システムを導入するといった方法もある。一方、日本オラクルと住環境計画研究所が今回の実証で目指すのは、生活者自身がエネルギー消費量に関心を持ち、自発的に省エネ行動を行う状況をつくることにある。

 この“自発的な省エネ行動”を促すための手段として、行動経済学の理論の1つである「nudge(ナッジ)」を活用する。ナッジとは英語で「そっと突く(押す)」という意味を持つ。2017年度のノーベル経済学省を受賞したリチャード・セイラー(シカゴ大学教授)氏らが提唱した行動経済学における理論の1つで、規制や大きな経済的インセンティブによる誘導を用いず、科学的なアプローチによって人の行動を良い方向へ変えていくという考え方だ。

 既にこのナッジを公共政策や環境政策に取り入れ、成果が出ている例もある。例えば、英国では税金の滞納者に対して行う通知に対し、“同じ地域内の住民の納税率を記載する”という実証を行っている。それを見た滞納者の納税意識が高まり、結果的に地域全体の滞納率が減少したという。既に英国や米国では、政府関連機関の下に“ナッジ・ユニット”と呼ぶ組織が置かれ、このようにナッジを利用したさまざまな取り組みが進められている。環境・エネルギー分野も代表的な導入分野の1つだ。

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