100年前の小水力発電を復活させて地域活性、導水にはパイプを使う新手法自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年12月06日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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「パイプ型の導水管」、そのメリットとは?

 導水管として利用するのは、直径約50cmのパイプだ。この中に水を密閉するように、満水状態にして水を運ぶ。管内が液体で満たされていれば、圧力によって管の途中に出発地点より高い地点があっても、ポンプなどを利用せずに水を運搬できる「サイフォン効果」を生かした導水手法だ。U字型の水路より、多くの水を運べるだけでなく、ポンプ設備を利用しなくていいため、設置コストを削減できるメリットもある。今回のプロジェクトでは、長さ1080mのパイプ管を敷設し、約76.7mの落差を利用して発電する。

 この方式を考案した坂内教授によると、50cmというパイプの直径は、さまざまな問題を考慮して決められた大きさなのだという。

 「パイプ内を満水状態にして水を流すので、水を運ぶ距離が長くなると、パイプと水の間に摩擦が発生し圧力が少しずつ低下します。さらに、圧力がさらに低下し、飽和圧力より低くなると泡が発生してしまいます。この気体の泡は水が高所から低所に落ちる際に圧力が再び上がることで、再び水(液体)に戻ります。この現象が起きると高圧の圧力波が発生し、最悪の場合水車の羽根を損傷させてしまう場合がありました。そこで今回はこの現象を避けるため、気泡を発生させることなく、最小のパイプ径で最大限に水を流せるようにする計画を立てました。この工夫によって、パイプの材料費や工事費を削減するとともに、水量を増やして発電量を最大化できる最適な設計を行っています」(坂内教授)

開発したパイプを利用する導水管の概要 資料提供:三重大学

数年で黒字化、利益は地域活性化に生かす

 建設する発電所、2019年4月の稼働開始を予定している。発電した電力は、全量を「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」を利用して、中部電力に売電する予定だ。年間の売電収入は約3500万円を見込んでいるという。建設に掛かる総事業費は約3.7億円だが、坂内教授は「発電所の建設費と保守に要する費用と、馬野川からの取水量を元に試算すると、今回の発電所は発電から2〜3年後に単年度で黒字化となる計画」と話す。

発電所の完成イメージ 資料提供:三重大学

 この売電収益を、出資者や地域に還元する取り組みも進める。新会社の、みえ里山エネルギーは、馬野川小水力発電を復活させるプロジェクト地域協議会などと共同で、発電所の稼働に合わせて一般社団法人を設立する。この一般社団法人を通して売電収益を、特産品などの形で出資者に還元する他、地域の活性化事業などに活用していく計画だ。

売電収益は一般社団法人を通して出資者や地域に還元する 資料提供:三重大学
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