パワーエレクトロニクス最前線 特集

直流送電の電力変換ロスを半減、洋上風力の高効率・小型化に電力供給(2/2 ページ)

» 2018年02月20日 09時00分 公開
[松本貴志スマートジャパン]
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SiCの採用によりスイッチング高周波化とスイッチングロスの低減を両立

 本技術では、パワー半導体材料としてSiCを採用した。SiCは近年登場した比較的新しいパワー素子であり、Siと比較してスイッチ導通時の損失(オン抵抗)が低いため、変換器セルの電力損失を抑えることができた。

参考:三菱電機が2017年9月に発表した電力損失が世界最小となるSiCパワー半導体素子。同社は、2020年度以降にこの素子の実用化を目指すとしている。 出典:三菱電機

 さらに、SiCモジュールを並列化させることによって、変換器セル内部の抵抗を抑えたとする。SiCモジュールの並列化では、各モジュール間の電流バランスが課題となっていたが、電磁界解析を用いて変換器セル内部の電流分布を可視化し、並列化したモジュールに電流が均等に流れるように部品を配置することで解決した。

従来の技術と今回の技術の比較 出典:NEDO

 また、SiCパワー素子はSiに比べて高速動作が可能で、スイッチング高周波化が可能なこともメリットだ。従来のSiを用いた変換器セルでは、スイッチング周波数が約150Hzであり、SiCを用いた変換器セルでは約350Hzに向上した。このスイッチング周波数向上によりコンデンサー容量の低減や、電力損失低減による冷却装置小型化から変換器セルの小型化が可能になったという。

 同社では今後、現状の3.3kVモジュールからさらに耐圧の高い6.5kVのSiCモジュール適用による開発を推進し、さらなる長距離大容量送電の高効率化と、変換器設置コストの削減を実現し、2020年代後半の実用化を目指すとしている。

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