直流送電の電力変換ロスを半減、洋上風力の高効率・小型化に : 電力供給 (2/2 ページ)
本技術では、パワー半導体材料としてSiCを採用した。SiCは近年登場した比較的新しいパワー素子であり、Siと比較してスイッチ導通時の損失(オン抵抗)が低いため、変換器セルの電力損失を抑えることができた。
参考:三菱電機が2017年9月に発表した電力損失が世界最小となるSiCパワー半導体素子。同社は、2020年度以降にこの素子の実用化を目指すとしている。 出典:三菱電機
さらに、SiCモジュールを並列化させることによって、変換器セル内部の抵抗を抑えたとする。SiCモジュールの並列化では、各モジュール間の電流バランスが課題となっていたが、電磁界解析を用いて変換器セル内部の電流分布を可視化し、並列化したモジュールに電流が均等に流れるように部品を配置することで解決した。
従来の技術と今回の技術の比較 出典:NEDO
また、SiCパワー素子はSiに比べて高速動作が可能で、スイッチング高周波化が可能なこともメリットだ。従来のSiを用いた変換器セルでは、スイッチング周波数が約150Hzであり、SiCを用いた変換器セルでは約350Hzに向上した。このスイッチング周波数向上によりコンデンサー容量の低減や、電力損失低減による冷却装置小型化から変換器セルの小型化が可能になったという。
同社では今後、現状の3.3kVモジュールからさらに耐圧の高い6.5kVのSiCモジュール適用による開発を推進し、さらなる長距離大容量送電の高効率化と、変換器設置コストの削減を実現し、2020年代後半の実用化を目指すとしている。
自然エネルギーへ移行する欧州、多国間で電力の取引量が拡大
欧州で自然エネルギーの電力が拡大する背景には、国際送電網による多国間の電力取引がある。島国のイギリスやアイルランドを含めて、欧州全体で年間に4500億kWhにのぼる大量の電力が国際送電網で送られている。他国との電力取引が活発なデンマークでは、輸出・輸入率が30〜40%に達する。
日本を縦断する距離、8000万人に6GW供給
高圧直流送電(HVDC)技術を利用すれば、1000キロメートル(km)以上離れた需要地に大電力を効率よく送電できる。スイスABBはインド、米国、ブラジルの3カ所で大規模なHVDCプロジェクトを受注したと発表。なぜ送電が必要なのか、どの程度の規模なのか、プロジェクトの内容を紹介する。
性能を高め、使いやすくするには何が必要? 基本に立ち返ったSiCパワコン
三菱電機は2014年11月以降に順次発売を開始する住宅用パワーコンディショナーを「PV Japan 2014」で展示した。高性能な半導体である「SiC」を採用したモデルが注目を集めていたが、それ以外にも多数の工夫が凝らされていた。
次期新幹線は電力消費量を7%削減、駆動システムとバッテリーを小型・軽量に
JR東海は2020年度に投入する次期新幹線の車両製作に着手する。東海道・山陽新幹線の主力車両「N700系」をフルモデルチェンジして電力消費量を7%削減する計画だ。中核の駆動システムを小型・軽量化するほか、リチウムイオンバッテリーを採用して停電時にもトイレを使えるようにする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.